先輩のプロ選手達が絶賛した天笠。

　攻守に万能な働きを見せた背番号6に、試合後、多くの賛辞が寄せられた。

　青森山田の1学年先輩の郷家友太（現・ヴィッセル神戸）は、自身のTwitterで、「青森山田高校の背番号6番天笠泰輝。檀崎とケネディの2人に注目が行きがちですが、この選手にも注目して欲しいです。同部屋だったから分かるけど、この3年間で嬉しいことも辛い事も1番経験した選手だと思います。チームの心臓ってこの選手の事を言うと思ってます！ 泰輝、笑って終われ！」とつぶやいた。

　さらに決勝戦後に西大伍（現・ヴィッセル神戸）が、天笠が関西大学に進学する事を知り、これもTwitterで「え、青森山田の天笠くんどこも取らないの」とツイートし、大きな話題を呼んだ。

　他にもTwitter上では天笠を賞賛する声が多く上がり、周囲の評価を含めても、「今大会陰のMVP」であることは間違いなかった。

　だが、彼はプロには行かなかった。

中学時代から将来を嘱望されていたが。

　もともと彼は1年時から将来を嘱望された存在だった。

　高校進学時、彼は鹿島アントラーズユースからの誘いを受けていた。群馬の強豪・前橋FCジュニアユースでプレーしていた彼は、鹿島ユースだけではなく、大宮アルディージャユース、地元の強豪・前橋育英、長崎総合科学大附属など、多くのチームから声をかけられる、すでに注目の存在だった。

「アントラーズユースはトップチームの練習に参加している選手もいて、プロに近いと思ったけど、ずっと高校サッカーに憧れていましたし、『前橋育英を倒したい』という気持ちがありました。その中で青森山田は選手権にも出ることができて、プロも輩出しているので……悩みましたが、最終的には青森山田に行きたい気持ちが強くなりました」

　青森山田のスタッフが前橋FCジュニアユースの視察に来た時、天笠は大宮ユースの練習会に参加していて不在だった。そのため、澤田ら他のチームメイトには声が掛かっていたが、彼には声が掛からなかった。

「どうしても青森山田に行きたくて、『ここで主張しなかったら、一生後悔する』と思ったので、前橋FCの監督に『青森山田に行きたいです』と伝えて、なんとか入る事ができました」

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