“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
高校選手権優勝の陰のMVPでは!?
青森山田・天笠泰輝に絶賛の声。
posted2019/01/28 08:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
「あいつがいなかったら優勝できなかったかもしれない」
名将・黒田剛監督をもってして、そう言わしめる男。それが青森山田のボランチ・天笠泰輝だ。
第97回全国高校サッカー選手権大会において、2年ぶり2度目の優勝を果たした青森山田は、CB三國ケネディエブス(アビスパ福岡加入)とMF檀崎竜孔(北海道コンサドーレ札幌加入)の2人のJ内定選手に大きな注目が集まったが、この2人に負けず劣らずの注目を集めたのが天笠だった。
【4-2-3-1】のダブルボランチの一角に位置し、広い視野から正確な長短のパスを繰り出して攻撃の起点となるだけでなく、豊富な運動量と激しいプレスバックで、守備面でも大きな存在感を放っていた。
初戦の草津東戦で、ペナルティーエリア外から放った左足ミドルシュートは、チームの今大会オープニングゴールとなった。そして、圧巻は決勝で2ゴールを演出してみせたスーパーなパスだった。
類まれな才能を見せた2つのパス。
決勝戦の0-1で迎えた40分。自陣で流通経済大柏にボールが渡った瞬間、3m後ろの位置から天笠が猛然とダッシュし、プレスバックを仕掛けた。
相手があわてて出した縦パスを右サイドバックの橋本峻弥が跳ね返す――ボールを右タッチライン付近で受けると、すかさずプレスに来た相手を冷静にヒールの切り返しでかわしてターンすると、落ち着いた雰囲気のまま、右サイド裏のスペースに飛び出したFW佐々木銀士へ約30mの浮き球ロングスルーパスを入れた。これに抜け出した佐々木の折り返しを檀崎が決めて、同点。
さらに2-1で迎えた88分。
「関川郁万が前に行ったことで後ろが3枚になっていると思っていたし、気持ちが前にいきすぎて、後ろのケアができていないと思っていたので、裏のスペースを狙っていた」(天笠)
センターライン付近。味方のヘッドのクリアボールを、DFラインの裏へ抜け出そうとした途中出場のFW小松慧へ――しかも、ダイレクトで反転しながらのスルーパスを送り込んでいる。結局、そのパスから小松がそのまま独走し、GKとの1対1を冷静に制して、3-1とした。
彼の才能が詰まった2つのパス。これ以外にも随所に彼はその高いポテンシャルを見せつけた。
中盤であらゆるところに顔を出し、DFラインからのパスを受けて、冷静に前を向いて正確な縦パスとサイドチェンジで攻撃のスイッチを入れていく。
守っては「天笠は攻撃で前にかかわってから、すぐに後ろに戻って来てくれる。スプリント力とハードワークの精神は凄いと思った」と、ボランチコンビを組んだ澤田貴史が語ったように、素早い帰陣と球際の激しさを見せた。