球体とリズムBACK NUMBER
“童顔の暗殺者”スールシャールが、
マンUに笑顔と攻撃性を取り戻した。
posted2019/01/18 07:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Uniphoto press
5年半の空白を経て、ついにマンチェスター・ユナイテッドが正しい指揮官を選択したようだ。
少し前にジョゼ・モウリーニョ前監督にエールを送るような記事を書いた者としては、変わり身の早さを咎められても仕方ないけれど、今は率直にそう思う。
オレ・グンナー・スールシャール、ノルウェー出身の45歳。かつてユナイテッドで“ベビーフェイスの暗殺者”というポッシュなニックネームを授かったストライカーは、12月中旬にモウリーニョが解任されると、暫定監督(モルデからのレンタル)として古巣に帰還した。そして先週末のトッテナム戦で公式戦6連勝を達成。御大サー・マット・バスビーが樹立した就任後の連勝記録を塗り替える強烈な快進撃だ。
ちょうど20年前のシーズンのチャンピオンズリーグ決勝は伝説になった。カンプノウに9万人を超える観衆を集めた欧州頂上決戦は、バイエルンが1点をリードして後半ロスタイムに突入。しかしユナイテッドがテディ・シェリンガムのゴールで追いつき、スールシャールの一撃で奇跡を完結させたのだった。
ファーガソンの薫陶を受けて。
赤い悪魔と呼ばれる名門に選手として壮大な足跡を刻んだスールシャールは、彼をマンチェスターに呼び寄せたサー・アレックス・ファーガソンの薫陶を受けたあと、自らも指導の道へ。恩師サー・アレックスの目の届く場所、ユナイテッドのリザーブチームのコーチが出発点だった。
下部組織のチームに複数のタイトルをもたらした後、祖国のモルデの監督に就任すると、ファーストチーム初采配にも関わらず、ローゼンボリという巨人が跋扈するリーグでクラブ史上初優勝を成し遂げた。
2012年にリーグ連覇を達成し、翌年に国内カップを制すると、2014年1月にはプレミアリーグで下位に沈んでいたカーディフから白羽の矢が立った。しかし途中就任からチームを立て直すことはかなわず、降格の憂き目に遭っている。