プレミアリーグの時間BACK NUMBER
大きくて優しい守護神チェフ引退。
プレミア16年目、最後に栄光を。
posted2019/01/19 11:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
プレミアリーグ史上最高のGKは誰か?
これは去る1月15日にイングランドの国内メディアを賑わせた話題だ。これは候補者の1人であるペトル・チェフへの敬意の表れだ。
プレミア16年目のベテランは、同日アーセナルでの今季をもって引退する決意を表明した。
話題の競合は複数いる。1992年のプレミア誕生以前からアーセナルのナンバー1だったデイビッド・シーマン、1月13日のトッテナム戦、11セーブでマンチェスター・ユナイテッドの勝利に貢献したダビド・デヘアら錚々たる顔ぶれが並ぶ。その中でもマンUにおけるデヘアの大先輩、ピーター・シュマイケルを推す意見が多いようにも見受けられる。
ただ筆者はチェフ支持者の1人だ。今季限りというセンチメンタルがなくとも、“ビッグ・ピート”をベストGKに推したい。
迫力ではシュマイケルが勝るという声はあるだろう。身体の大きさにちなんだニックネームでも、デンマーク人(dane)で語呂が良く、大型犬の犬種でも知られる“グレート・デーン”の方が威圧感を与える。シュマイケルは、自身のミスが絡んだ失点時でさえ、目の前のDF陣に凄い形相で吠えるタイプでもあった。
「控え目で優しい男」チェフ。
その点、チェフは物静か。本人も認めている。プレミア1年目だった2004-05シーズン、加入したチェルシーの観戦プログラムに選手のQ&Aコーナーがあったが、お決まりの質問である「墓碑に刻んでほしい言葉は?」に対して、「控え目で優しい男」と答えていたのが彼である。
とはいえ、最終的に11年間在籍したチェルシーでも計33試合でキャプテンを任されたことが示すように、自らのプレーで雄弁に語れる選手でもあった。
アーセナルでの今季は、前半戦の途中から第2GKとして過ごしている。ウナイ・エメリ新監督から足元を求められた36歳は、レギュラーの座を26歳のベルント・レノに奪われてしまった。だが、最後尾で立ちはだかる守護神としての存在感は、全盛期のシュマイケルにも引けを取らない。