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大谷翔平へ栗山監督からのエール。
「僕の想像をさらに越えてくれ」
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph byNanae Suzuki
posted2019/01/14 09:00
大谷翔平のメジャー1年目を語ってくれた栗山監督。愛弟子の活躍に目を細めていた。
手術しても成長できるでしょ。
右ヒジの手術については、翔平が決めたということが大事なんであって、アイツが決めたことを野球の神様は応援すると信じているからね。あれだけのスピードを出せれば負荷は掛かるだろうし、この手術、いつかはやらなきゃいけないのかなと思っていたけど、でも、この段階で踏み切ったことに対しては翔平らしいなと思ったよ。
復帰まで1年かかったとしても、まだ成長段階の年齢だし、そういうところに早く向こうへ行った意味があるわけだから……このタイミングなら術後でもまだまだ身体も技術も上げられるし、成長できるでしょ。
手術を受けたあと、苦しいのは元に戻そうとするからなんだよね。すごくなりすぎて、そこでケガをすると、あのすごかったときに戻さなきゃ、という意識になる。でも、そうじゃない。もっとすげえ自分になろう、まだ足りない、身体もこれから成長するという時期に手術を受ければ、変わった身体にもなじみやすいし、違った自分を作れる可能性も高いんじゃないかなと思う。
翔平をそんなに甘く見てないよ。
翔平はもっと速い球を投げられる。でも、それじゃ、壊れちゃう。だからといって、勝つには150kmで十分、なんていうのは翔平じゃないからね。アイツならヒジの手術を受けたあと、バッティングでいうところのステップと同じように、こんなに小さな投げ方で、こんな速い球を投げるんだっていうものを見つけてくれるんじゃないかと思ってるんだ。
僕は翔平をそんなに甘く見てないよ。アイツなら進化してくれる。僕の想像をはるかに越えてくる。極端な話、キャッチャーのような投げ方で、ヒジに負担をかけずに170kmを投げちゃう、みたいな……身体を大きく使えばいい球が行くんだけど、それでは壊れちゃうという野球選手のジレンマを、アイツがぶち壊してくれるんじゃないかと期待しているんだ。
170kmを投げて、かつ壊れない。そういうところを目指したいから、手術を受けて、何も気にすることなく、思いっ切り野球をやりたかったんだと思うよ。