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ドジャース「幻の長嶋茂雄トレード獲得」は本気だった…監督が直談判「メジャーでやる気あるか?」じつは“ド軍ユニ”でプレーした日も
posted2025/06/21 06:00

2003年、ヤンキース松井秀喜と握手する長嶋茂雄。もし彼がドジャースに電撃トレードとなっていたら、日米の野球史は大きく変わっていたのだろう
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広尾晃Kou Hiroo
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Al Bello/Getty Images
長嶋茂雄は、MLBに移籍する可能性がある選手だったといわれている。
じつは、当時から結構多くのNPB選手が、MLB球団や関係者から声をかけられた経験を持っている。
ドラフト施行後で言えば、MLBは毎年ドラフトで1球団50人、全体で1500人もの選手を指名していた。今では1球団20人、全体で600人程度になっているが、かつては「少し見どころがある選手」には、気軽に声をかけていたということのようだ。
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しかし長嶋茂雄の場合は、そうした「軽い声かけ」とは別個のものだったようだ。
カージナルスvs全日本…長嶋は13安打2発2盗塁
1958年、立教大学から巨人に鳴り物入りで入団した長嶋茂雄は、本塁打王、打点王、打率2位という屈指の成績を残し、新人王を獲得した。
そのオフ、2年ぶりに日米野球が行われた。
来日したのはセントルイス・カージナルス。大打者スタン・ミュージアル、名三塁手ケン・ボイヤーなどの陣容。カージナルスの来日を以前から強く推していた元巨人取締役の鈴木惣太郎は、讀賣新聞社の正力松太郎を説得し、全16試合の対戦相手を「全日本」とすることとなった。シーズンオフに「オールジャパン」が16試合も行うのは、全く異例のことだった。
巨人からは、長嶋茂雄、廣岡達朗、藤尾茂、与那嶺要、藤田元司、堀内庄と主力選手6人が出場した。
10月24日、後楽園球場で行われた第1戦、長嶋はこの年10勝した左腕投手、マイゼルから本塁打を打ち、MLB側に強烈な印象を残した。以後の試合でも長嶋は攻守に大活躍。全16試合のうち15試合に出場し、日本人選手最多の13安打、2本塁打、2盗塁、打率.283を記録した。このシリーズで打率.385と大活躍したのは二塁手のドン・ブラッシンゲーム。のちに南海でプレーし、阪神・南海の監督にもなったドン・ブレイザーだ。
ド軍監督が「メジャーでやる気はあるか?」
カージナルスは14勝2敗と力の差を見せつけたが、長嶋の活躍はメジャーリーガーにも強烈な印象を残した。