ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
ファイターズが王柏融に宛てた、
107ページもの「ラブレター」。
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byAFLO
posted2019/01/04 10:00
MLBで活躍した王建民に憧れて野球を始めた王柏融。高校までは無名だったが、大学で急成長。台湾リーグ5冠王にまでなった。
アナリストと通訳の手腕。
そのアナリストは、考えに考えた。野球を人生の第一義としている王選手の琴線に触れるようなデータを抽出し、書面に落とし込んでいった。詳細をオープンにはできないが、ファイターズに王選手が必要であり、また適応できる、などといったメリットを、データなどで力説したのである。
もう1人、通訳はガムシャラに動いていた。王選手が、台湾を代表する大衆料理の1つ「魯肉飯(ルーローハン)」が好物であるという情報をキャッチした。プライベートの時間に、札幌市内で「魯肉飯」を提供している店を食べ歩いたという。有名焼肉店でのバイト経験があり、若くして肥えた舌で吟味。自らチョイスした推奨店を、その資料へと列挙したのだ。
膨大な107ページのラブレター。その中にも、メーンとなる部分があった。
栗山監督の奥深いメッセージである。
「自分のためだけにプレーしてほしい。それがチームの勝利につながる」
栗山監督も恋焦がれて。
真意を推察して、その言葉を解説する。以下である。
周囲からの注目、またプレッシャーもあるだろうが、可能な限り遮断して、プレーをしてもらいたい。そうすれば、疑うことのない実力、魅力を評価されている王選手なら活躍をして、ファイターズの戦力になる。
メッセージは、このような大意であると思っている。
そんな無数の思いと熱を、中国語に訳した107ページのラブレター。
かくして完成し、きっと王選手の入団への効力はあったのだと思っている。渉外担当の執念、それに、ほだされた若きアナリストと通訳、かねて恋焦がれていた栗山監督。獲得へ向けて、激しくゴーサインを出したフロント陣がいた。
それが107ページに結集され、ファイターズの総意が形になった。
長編のラブレターになったのである。
そんな片思いが結ばれ、両思いとなった晴れの会見を終えた。