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内田篤人「かわいいんだよ、後輩は」
レアル戦後、安部の涙にもらい泣き。 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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posted2018/12/20 12:00

内田篤人「かわいいんだよ、後輩は」レアル戦後、安部の涙にもらい泣き。<Number Web> photograph by AFLO

レアルに力の差を見せつけられた経験は内田にとって、安部や土居という後輩たちにとってどんな意味を持つのだろうか。

自分から後輩たちに声をかけはしない。

 リーベルとの3位決定戦についての話をしたものの、また話題は若い選手へと戻った。

「若いときは、こんな風に相手を『すごい』なんて言わなかった。『実るほど頭を垂れる稲穂かな』ってことわざがあるけど、若いときは垂れる必要なんてないから。相手を認めなくてもいいと思う。グングングングン上に行けばいいんじゃないかな。

 上へ行けばいろんなものが見えるはずだし。(安部は)ポテンシャルもあるし、可能性が無限大だなって思う。挑戦していろんな壁にぶつかってきなさいって思うよ。年取ったな俺も。こんなことをいう日が来るなんて思わなかった。後輩のことを自分とダブらせて、涙ぐむなんてことはないと思ってたけど、かわいいんだよ、後輩は。気持ちがわかるから(笑)」

 自分から安部ら若手に声をかけることはしないという。どんな励ましも慰めも彼ら若手の力にはならない。自らが気づき、切り開き、這い上がる道を探し、もがくしかないことを内田自身が経験したからだろう。

安部も内田もエネルギーを得たのでは。

「僕は(負けた)悔しさではなく、勝って成長したい」

 悔しいという怒りにも似た想いと、喪失感のような落胆。そういう感情を抱きながらもそう力強く言った安部の姿もまたたくましかった。

「もう対戦することはないと思っていたレアルともう一度、鹿島の一員として戦えることは感慨深い」と戦前話していた内田。2015年春のレアル戦以降(その後代表戦には出場したが、シャルケでの試合は2016年12月まで出場できなかった)、彼の長いリハビリ生活が始まった。

 欧州で復活することは叶わず、帰還した鹿島でのシーズンもまた、コンディション調整や負傷に苦しむ1年だった。戦力と呼ぶにはまだまだ物足りない。それは内田自身が強く実感しているだろう。諦めることは容易いが、諦められない想いがあるはずだ。レアル・マドリー相手に最後まで食らいつく若手の姿にそんな自身の原点を再確認できたことで、新たなエネルギーを得たと願いたい。

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