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内田篤人「かわいいんだよ、後輩は」
レアル戦後、安部の涙にもらい泣き。 

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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posted2018/12/20 12:00

内田篤人「かわいいんだよ、後輩は」レアル戦後、安部の涙にもらい泣き。<Number Web> photograph by AFLO

レアルに力の差を見せつけられた経験は内田にとって、安部や土居という後輩たちにとってどんな意味を持つのだろうか。

安部は「日本にとどまる選手じゃない」。

 いったん話題が変わっても、約20分の間、内田の話のテーマは、安部や土居など、この日ピッチに立った若手の話に終始した。

「海外へ出る理由として、北京オリンピックとか、U-20のワールドカップとか。いろいろなきっかけがあると思うんですよ。俺の場合はなんとなく、行ってみたけど。俺らの1個上のキャラの濃い、本田、長友、岡崎がオリンピックでやられて、海外行こうかなって。そういうきっかけは人それぞれだと思う。

 裕葵にとってそれが今日の試合なのかはわからない。でも、(安部は)日本にとどまっている選手じゃないと思うよ。今日の涙を見てもわかる。こういう気持ちをきっかけにして、強くなっていくもんだと思うから。今日のあいつの涙が今後の日本のサッカーにとって、なんかいいきっかけになってほしい。裕葵はそれくらいのポテンシャルを持っているから。直接本人には言わないよ。なんかほめてるみたいだし、なんか上から目線だし(笑)。

 ひとりでボールを逆サイドまで運んだりする姿や、試合後にロッカーに戻ってきた姿を見て、思うところがあるんだなって感じた。俺もああいうときがあったなって。3-1になってあれだけ回されて。子どもみたいに扱われて。そんななか、裕葵や(土居)聖真がもがいていたことが嬉しかったね。ああいうのを見て、俺も元気が出たよ」

「こっちは一生懸命やっていたけどね」

 内田自身が語るように、彼が打ちのめされたのは、シャルケへ移籍したあとだった。まずはクラブ内で違いを突きつけられ、ブンデスリーガでもまれ、そしてチャンピオンズリーグで「絶対に勝てないんじゃないか」という失望を味わったのだ。

「特にチャンピオンズリーグのベスト16以上。ユナイテッドとやって、レアルとやって、チェルシーとやって、ビルバオとやって、バレンシアとやって、インテルとやって、その繰り返しだよ。自分の選手としての立ち位置みたいなものを見せつけられるというかね。

 45分とか、1試合やっただけじゃわからん。本当に向こうへ行って、今日みたいな緩いサッカーじゃなくて。こっちは一生懸命やっていたけどね。チャンピオンズリーグみたいな大人なサッカーをやってくる大会に出て、肌で感じて、それを半年とか1年、2年じゃなくて、7年半っていうのは、自分のなかでもよく頑張っていたんだなって思った。

 いつか、チャンピオンズリーグベスト16常連というようなトップのトップのクラブに行って、スタメンでバリバリ活躍する日本人、若い選手が出てきたら面白いと思う。俺はダメで帰ってきたけど。それが裕葵なのかはわからないけど。俺は泣かなかったよ、膝をついてはいたけれど。

 俺らがレアルと対戦して感じるものを、レアルの選手が知っているのか、知らないのかはわからないけれど、この思いは、我々にとってはすごい大事。日本という国、鹿島というチーム、裕葵という選手、聖真という選手にとってはね。この大会は無駄にしちゃいけないと思う。

 自分たちでつかみ取ったアジア代表として手にした経験だしね。選手個人としても、チームとしても、ここからどう這い上がっていくかが大事。運のいいことに次は南米のチャンピオンとやれるからね。俺、リーベルとボカの試合をハイライトで見たけど、すごかった。レベルが違う。彼らは背負っているものが違うし、南米のチームがクラブW杯へかける想いは、ヨーロッパのチーム以上のものがある。今日みたいに遊んではくれないからね。レアルとはまた違った意味でのやりにくさがあるはず」

【次ページ】 自分から後輩たちに声をかけはしない。

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