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ラグビーPRESSBACK NUMBER
「僕に関わる人には確実に迷惑をかける」それでも病とラグビーに向き合った早大生を支えた仲間たちと母の言葉
posted2022/10/14 11:04
text by
中矢健太Kenta Nakaya
photograph by
Asami Enomoto
2021年11月、小西泰聖は大田尾竜彦監督から部分復帰を打診された。自分がまたラグビーをするなんて、少しも考えられていなかった。自分はそんな段階にいないと思っていた。でも、「復帰」という言葉を身内から聞けたのが、うれしかった。そのときが近づいているのかな。そんな気がした。
医師の許可を得た上で、まずは練習に戻るためのトレーニングを開始した。真っ暗でなにも見えなかったところに、小さな光が差した。
だが、実際に動き出すと、体調は不安定になる。検査の数値も悪化した。様子を見ながら、少しずつ試してみるものの、その過程は険しいものだった。
あるとき、小西は言葉を選びながら、紡ぐようにして、心の内を打ち明けてくれた。
ラグビーを続けることが“正解”なのか
「はっきり言って、ラグビーはしない方がいいと言われてるんですよ。するかしないかを考えるときに、当然、するっていう選択肢はあるんですけれど、その場合、これから僕に関わる人、例えば家族もそうだし、将来できるかもしれない家族に確実に迷惑をかける。食事制限のことを考えて食事を作ってもらわないといけないかもしれない。一緒にご飯を食べに行くことも、簡単にはできない。
間違いなく僕に関わる人に迷惑をかけるけど、僕はやりたいことの達成を目指す。
この状況は果たして“正解”なのか。
逆に、僕に関わる人に迷惑をかけないために生きることを選んだ場合、僕がやりたかったことは、おそらく達成されない。小さい頃から思い描いてきたことは達成されないけど、僕に関わる人を不幸にすることは間違いなく、ない。
そっちに全力を注ぐ。そんなふうに考えたりもして、それを考える中で、僕の個人軸だけでは考えられないじゃないですか。
すごいそういうところは悩んで、他人ともすごい距離とって。どうしても暗い話、暗い表情にさせちゃうんですよね。僕もうまく笑えないし、意識して笑っているんですけど、不自然になっちゃうし。すごいそういうのは感じて、申し訳ないなって……」