プロ野球亭日乗BACK NUMBER
カープ大瀬良大地「残像を残せた」。
柳田悠岐の第4打席に、その効力が。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/10/28 12:00
5回2失点の結果以上に好内容の投球だった大瀬良大地。次回の先発でも期待がかかる。
2打席で徹底したインコース。
2回の第1打席。
膝下のカットボールで入り、3球目にやや抜け気味のスライダーが真ん中高めに入ったのを除くと、全6球のうち5球はインコースを攻めたものだった。
結果としてこの打席は、最後に内角低めのカットボールで二ゴロに打ち取っている。
そして4回2死一塁で迎えた第2打席は、さらに徹底して内角を攻めて抑え込んだ。
この打席では初球の127キロのスライダーからカットボール、ストレート、カットボールと4球続けて、すべて内角の厳しいところを突きまくった。そうして2ボール2ストライクと追い込むと、最後もインコースの真っすぐだった。
これでもかという内角攻め。いつ外がくるのかという疑心暗鬼を抱かせるだけでも効果はある。そうして最後も内角にズバッと決めたストレートに柳田はバットが出ずに見逃し三振に倒れた。
ただ、大瀬良の“快投”は、実際に対戦したこの2打席だけではなかったのである。
それが8回2死一塁で回ってきた第4打席だった。
大瀬良降板後の打席で……。
マウンドは今季の広島優勝の影の立役者であるヘロニモ・フランスア投手。
「あそこはホームランを狙っていた」
柳田が振り返ったように、初球の141キロのストレートから徐々にスピードが上がっていくフランソアのパワーピッチと、柳田のフルスイングとの力と力の勝負。最後はフルカウントから真ん中高めの154キロに柳田のバットが空を切って空振り三振。フランスアに軍配が上がった。
「当たらんかったっすね。最後が一番速かった」
試合後にこの打席を振り返った柳田のコメントだが、ただ、甘い球がなかったわけではない。
それが2球目にファウルにした、真ん中からやや外角寄りの高めの真っすぐだった。
この打席で唯一、甘く入った真っすぐで、ホームランを狙っていた柳田にとっては逃してはならない球だったはずだ。
しかし、それをきちっと踏み込めずに打ち損じた。
そこに大瀬良が最初の2打席で徹底した内角攻めで、柳田の頭に残した内角への意識づけがあったのだ。大瀬良が残した残像があったのである。