サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「拓実、翔哉、律……勢いあるね」
原口元気がライバルを称えた理由。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/10/18 17:00
ウルグアイ戦では中島翔哉に代わっての途中出場だった原口元気。それでも表情からは余裕を感じる。
監督と30分近く個別面談。
このとき原口は、ブライテンライター監督に個別に呼び出された。そして膝をつき合わせて、30分近くも話をする機会があった。
「確かに、オマエには10番を与えた。でも、10番らしい『上手い』プレーをしようとしているのではないか? オマエの良さはそうではないだろう? ロシアW杯のときのオマエは、攻撃でも、守備でも全力でプレーしていた。そのうえで、ゴールも決めた。そういう全力のプレーを私は見たいし、それでチームを助けて欲しい」
新天地では、10番にふさわしいような華麗なプレーを意識していた面は確かにあった。
だから、その言葉にハッとさせられた。ハノーファーに合流する前、日本代表としてW杯を戦っているときのプレーにも目を配ってくれた監督の言葉を聞いて、原口は自分の原点に思考を巡らせていた。
「どうやったらチームを助けられるか。苦しいときに、走って、ボールを拾って、ボールを運んでという地味な仕事をするのも自分の大切な仕事だということだよね。それは代表戦前の試合でも思ったし」
全力でやった上で得点に絡む。
今シーズンの原口がこれまでと違うのは、開幕からフルスロットルで戦えていないということだ。ともすればネガティブに映りそうな現象だが、必ずしもそうではない。これまではオフシーズンもストイックに身体作りに励んでいて、開幕直後は良いスタートを切るものの、シーズン終盤に失速することがあった。
序盤で苦い経験を味わったことで、じっくりと考える機会を得た。だから今の原口の頭のなかにあるのは、4年後を明確にイメージすることではない。大切なのは徹底したうえで、置かれた状況や環境に応じて努力するための余白を残していくことだ。
「たぶん、目指していくところは少しずつ変わっていくと思う。毎シーズン、課題だと考えるものも自分を取り巻く状況も変わっていくから。ただ、自分には今まで積み上げてきた武器があるのに、それを捨ててなんとなく上手にプレーしようとするのは、違うのかなと思ったよね。今までやってきたことを全力でやったうえで、得点に絡んでいくこと。それをしなければ、ハノーファーでも代表でも試合に出られないでしょ」