“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
独善的なFWが大人になった訳――。
清水・北川航也、カタールW杯の夢。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/08/15 07:00
フィジカルの強さ、プレーのスピード、そして類まれなテクニック……あとは結果が待たれるだけの北川航也。
スピード感溢れる圧倒的な攻撃を!
J1第20節のアウェイ・鹿島アントラーズ戦。
12試合連続スタメン出場を果たした北川は、上手く攻撃を組み立てられないチームの中にあって、虎視眈々とゴールを狙っていた。何度もゴール前にスプリントを繰り返し、ボールが来なくても、腐らず何度も動き直していた。
0-0で迎えた54分、相手のCKからのこぼれをDFファン・ソッコが拾って右サイドをドリブルで駆け上がると、守備に回っていた北川は猛然とロングスプリントを開始。戻り切っていない相手DFラインの間を狙って、トップスピードで駆け上がった。
ファン・ソッコからスルーパスが届くと、トップスピードから急停止して追って来たDFを振り切ると、こちらもトップスピードでプレスバックに来ていた鹿島DFチョン・スンヒョンのタックルも届かないほど、高速ダブルタッチから右足を強振。内側に巻く強烈なシュートはゴール左ポストを直撃した。
ゴールこそならなかったが、彼の長所である「スピード」が、すべての局面で出た圧巻のプレーだった。
「今はシュートまで持っていく速さに、よりこだわってトレーニングをしているところです。
あのシュートはまさにW杯を見て参考にしたものが出せだプレーだったと思います。正直、入ったと思ったんですけどね(笑)。でも、そういうこともある。次決められるよう、頑張ります!」
「チームを自分が勝たせたい」
まさに覚醒のときを迎えている北川航也。
独りよがりなプレーを見せていたあの頃の面影はもうない。
「チームを自分が勝たせたい、チームを引っ張っていく……そして、さらにその上のレベルに行きたいという、明確な目標があるんです。
この目標は凄く幸せなこと。それを与えてくれているエスパルスというクラブには心から感謝しています。エスパルスがなければ僕はサッカーをやっていないと思いますし、エスパルスがあったから、小さい頃から高みを目指してやれているのだと分かりましたから」
この言葉を聞いて、私は思わず彼にこう言ってしまった。
「航也、大人になったね!」
すると彼は笑顔で「そうですね」と返して、こんな決意の言葉を最後にくれた。
「僕としてはこのエスパルスで絶対に結果を残したい。エスパルスに1つでも多くの勝ち星を付けたいと思ってやっています。チームが上位にいないと、(日本代表スタッフに)見られる回数も減りますからね。
ただの活躍ではなく、90分間が終わったときに『両チーム合わせて誰が一番良かった?』と聞かれたときに、誰もが『北川航也だよね』と言われるように、圧倒的な存在感を出し続けていきたいと思っています。それがカタールW杯に繋がっていくと信じてるので」