“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
独善的なFWが大人になった訳――。
清水・北川航也、カタールW杯の夢。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/08/15 07:00
フィジカルの強さ、プレーのスピード、そして類まれなテクニック……あとは結果が待たれるだけの北川航也。
ずっと独りよがりに見えた北川。
「育成年代は自分が『怪物』などと言われたことは耳にしていましたが、正直自分はそういう自覚がなくて、ただ点を獲りたい、自分のプレーを出したいと思っているだけでした。
当時は試合に常に出られてましたし、点を獲ったり、良いプレーができている一方で、一度点が獲れなくなると精神的に何もできなくなる自分もいて……。
プロに入ってからも、1年目は特に怖いもの知らずで、自分の好きなことだけをやっていた感じでした。正直、先輩達にいろんな指摘をされても、素直に受け入れられていませんでしたしね。時には喧嘩みたいになってしまったこともあったくらいで」
確かに独りよがりな面は否めなかった。プロ入り後も、それはなかなか拭えなかった。
彼のように類まれな才能があり、点を獲ることに飢えたストライカーなら、高校生だろうが、プロに入ろうが、「絶対に点を獲る」とか「獲って勝たせたい」という気持ちは自然に出てくるものなのだ。
だが、それが「口だけ」に留まる選手が多いのも事実である。
口では「点を獲る」と言うが、点が獲れないと途端に不機嫌になったり、周りのせいにする。要するに、単なるわがままな存在になってしまうわけだ。
チームを勝たせることを本気で欲しないと、実は点も獲れない……そこに果たして気がつくかどうか。
「いろんな大人の先輩達が世話をしてくれた」
これまでの北川には、その本気をあまり感じなかった。しかし今シーズンは、そのプレーの端々から、心の底からチームの勝利を願い、ゴールを欲する気持ちがヒシヒシと伝わってくる。
「未熟な部分が多かった僕を……いろんな大人の先輩が世話をしてくれていたんです。そんな風に思えるようになったのも、プロ4年目で、このチームでハッキリした結果を出さないといけないと思ったからです。
それに、今年がW杯イヤーで、今回は無理でも4年後のW杯に繋げるためには、今年が非常に重要になってくる、と考えたからでもありますね」
彼の心境の大きな変化のきっかけのひとつは、6月のロシアW杯だった。
4年後のカタール大会を本気で目指すと決心した北川は、このロシア大会をテレビで食い入るようにずっと観ていたという。