“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
独善的なFWが大人になった訳――。
清水・北川航也、カタールW杯の夢。
posted2018/08/15 07:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
怪物がようやく覚醒しつつある――。
清水エスパルスの下部組織で育ち、トップ昇格から4年目を迎えるFW北川航也は、生まれ育ったクラブでエースの座に君臨している。
第15節を終えてリーグ7ゴール。これまでのキャリアハイは2016年の9ゴール。だが、この時チームはJ2に所属で、J1では昨年の5ゴールがキャリアハイとなる。
北川は1996年7月26日生まれの22歳。この世代は“北川航也世代”と言っても良いほど、育成年代から彼の能力は図抜けており、そのポテンシャルも高いものがあるとされていた。
両足から放たれる強烈なシュート、一瞬で相手DFを抜き去るスピード、そして恵まれた体格など、多くの要素でハイレベルな才能を持っていた。
最終的なシュートをイメージするファーストタッチからの一連の流れは非常にスムーズで、一度ボールを持って“乗った”ら手がつけられないという、恐るべきアタッキング能力を持っている。
ユース時代から、この一撃で流れを変えられるストライカーは「怪物」、「天才」と称されてきた。
だが、彼はこの世代の旗手にはなれなかった。
プレーに不満そうな素振りが見えた日。
清水ジュニアユースに所属していた中3の時、日本クラブユース選手権(U-15)で大会MVP・得点王を獲得。U-14日本代表からほぼ毎年コンスタントに年代別代表にも選出されていた。
しかし、U-16日本代表ではFWとしてだけでなく、CBやボランチでも起用されていた。
彼の能力をもってすれば、他のポジションでもすぐに適応できるし、どのポジションでもそれなりのレベルのプレーはできていたが、どこか不満そうな素振りが見え隠れするのが気になっていた。