くまさんの蹴球漂流記BACK NUMBER
広島のパトリックはPK1つでも貪欲。
Jで勝負する外国人FWに学ぶこと。
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byGetty Images
posted2018/08/11 08:00
広島のJ1首位快走の立役者パトリック。将来的な日本国籍取得も視野に入れているというほどの親日家だ。
青山にPKを譲ってもらって。
前半終了間際、青山敏弘が上げたクロスを横浜の仲川輝人が不用意にも右手でブロック。これで得たPKをキャプテンの青山敏弘が蹴ったが、横浜GK飯倉大樹に止められてしまう。
だが蹴る直前に飯倉がゴールラインから前に出ていたため、やり直しになった。この2本目を青山に代わってパトリックが蹴り、落ち着いてネットを揺さぶる。
試合後に確認すると、パトリックは1本目からベンチに向かって自分が蹴りたいとアピールしたが、青山で行くというベンチの指示を尊重。やり直しの2本目を、青山から譲ってもらった。
このPKで印象深いシーンがある。それはキックの瞬間でもなく、決めたあとのパフォーマンスでもない。
横浜の選手たちが審判に抗議する間、ふとゴール前に目をやると、PKスポットにパトリックが立っていた。このときの自分が蹴って当然というかのような表情が、なんともいえずよかった。
高原とエジミウソンのPK争い。
このシーンを見て、思い出したPKがある。浦和レッズで活躍したエジミウソンのPKだ。
2008年、等々力競技場での川崎フロンターレ戦。浦和はDFラインの裏に抜け出した高原直泰がエリア内で倒され、レフェリーがPKを宣告する。だが次の瞬間、PKスポットにエジミウソンが立っていたのだ。
私も驚いたが、高原はもっと驚いただろう。
浦和に移籍して1年目、なかなか結果を出せずにいた彼にとって、それは自らがつかみとった貴重なチャンスだった。それをチームメイトがさらおうとしているのだ。ちなみにエジミウソンも移籍1年目、サポーターの信頼を勝ち得てはおらず、ゴールを欲していたのはこちらも同じだった。
立ち上がった高原は当然、エジミウソンに詰め寄り、自分が蹴ると主張する。だがエジミウソンは、根を張ったようにPKスポットから動こうとしない。