セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イタリア全土がロナウドフィーバー。
彼はなぜ、ユベントスを選んだのか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/07/25 08:00
チャンピオンズリーグ(カップ)優勝13度のレアルに対し、ユーベは2度のみ。CL歴代最多120ゴールのC・ロナウドは悲願達成の使者だ。
アメコミ・ヒーローのような男。
クリスティアーノ・ロナウドは、ほぼ完全無欠のフットボーラーだろうと思う。肉体や技術に文句のつけようはないし、アメコミ・ヒーローのような笑顔で自己鍛錬を欠かさない。真面目一辺倒でもなくスーパーカーや女性も大好きだ。誰もが憧れる要素に満ちている。
20日付のトリノ地元紙『トゥットスポルト』にロナウド自伝を共著した記者のインタビューが載っていた。
彼はいつも自信満々のロナウドを見るたびに、故郷マデイラ島で撮られた少年時代の写真を思い出すのだ、という。
その頃の彼は痩せっぽちで「世界一のサッカー選手になる」と強弁しては、教師から「サッカーでは食べていけないのだから勉強しなさい」と叱られた。父親は酔っぱらいだったがそんな男でも家にいなければ夜は不安で寝付くことができなかったから、暗い夜道を酒場まで迎えに行った。
惑星最大のスーパースターになったけれど、どこか繊細な少年の面影がある。だから常人離れした腹筋を持っていても、人びとはロナウドに惹かれるのかもしれない。
「落ち着いて、準備できている」
ユーベ入団会見で、ロナウドは長男を同席させ、時折ウインクしては和ませていた。
今までにCLやEUROといった取材現場でロナウドを見たことはあった。しかし、あらためてセリエAに降り立った彼は、一回り大きく見える。実際にグラウンドで対峙する対戦クラブの選手たちの目にはどう映るだろう。
「僕は落ち着いているし、準備はできている。僕には自信がある」
圧倒的実績と漲る自信。ほとばしるエネルギーの塊。
クリスティアーノ・ロナウド最後の挑戦がイタリアで始まる。