プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人の二軍で耐えて学んだ4カ月……。
ヤングマン初登板初勝利の舞台裏。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2018/07/06 08:00
ウイニングボールを手に笑顔のテイラー・ヤングマン。テキサス生まれの28歳、身長198cm。
ボールのスピン量はマイコラスや岸を上回る。
ただ、それぐらい威力があるが扱いの難しい球種だけに、ヤングマンも苦労した。
オープン戦ではボールやマウンドの違いに慣れきれずに、そこで綻びが出ていた。カーブの制御に苦しみ、ストライクを取りにいったところを痛打されて失点する場面が何度もあったのはそこに理由があった。
しかし開幕からファームで地道に投げ続ける間に大幅に改善されて、そうなると威力の大きさがはっきりと結果に出るようになる。
昨年、巨人で14勝を挙げて今季からメジャーに復帰したマイルズ・マイコラス投手も、カーブを武器にして成功した投手である。
トラックマンのデータによると、そのマイコラスのカーブは回転数が毎分2700回転前後で、これは同じくカーブを武器とする楽天の岸孝之投手らと同レベルの数値となる。
ところがヤングマンのカーブのスピン量は平均値が3000回転とこれを大きく上回る。
この回転数の多さにあの大きく縦割れする“魔球”の秘密があるわけだ。
日本のボールとマウンドに慣れ、変化量の大きい“魔球”をきちっと制御できるようになった結果が、中日戦でのわずか2四球という数字にも出ていた。
不動産投資にも興味持つ好奇心旺盛タイプ!?
待ちに待った一軍マウンドでの初登板初勝利。
「非常に楽しみにしていた初登板でチームの勝利に貢献できて嬉しい。緊張より興奮が上回った。味方の援護や守備にも助けられて勝つことができた」
お立ち台ではこうクールに語った右腕だが、不動産投資などの事業にも興味が強く「小さい頃から疑問に思ったことはすぐに先生に聞くタイプ」と自己分析する。
耐えて、学んで、きちっと自分の力を引き出した。それが長い雌伏から最初のチャンスで結果を出したヤングマンの秘密である。