マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
岡本和真は高3からモノが違った。
2本塁打の合間に、優しいミート。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/07/03 08:00
22歳ながら巨人の主砲へと成長した岡本和真。その打撃力は智弁学園時代から煌めいていた。
高3のセンバツで「モノが違う……」
熱くなった参加者の方からきびしいご指摘もいただいたが、私の中には漠然とした予感があった。
智弁学園・岡本和真に「モノが違う……」と心が震えたのは、彼の高校3年のセンバツの時だ。
初戦、試合前のことである。
智弁学園の選手たちがダグアウトの前で素振りをしながら、試合開始に備えていると、その中で、岡本和真だけがバットを振らない。
もちろんチームメイトと同じようにバットは構えるのだが、彼だけがスイングをしない。
バットを握ったグリップを右耳の後ろに置き、ゆったりとタイミングをとりながらトップを作ると、そこから踏み込んだところで動きを止める。
わかってるヤツだな……と思った。
力を体の内側に溜めたままで踏み込む。
大会ナンバー1のスラッガーの前評判だから、相手投手は警戒して外にボールを集めてくるに決まっている。
ならば、まずは開かないこと。それには、力を体の内側に溜めたままで踏み込んでいけるかどうか。その一点に尽きる。そこさえ出来ていれば、あとはインサイドアウトに振り抜くだけだ。
それがわかってるから、そういう“準備”をしているのだろう。
答えはすぐに出た。
まずバックスクリーンに高々と放り込むと、第3打席はライナー性の軌道でレフトスタンドへ、文句なしのホームランを叩き込んでみせた。
「モノが違う」と心が震えたのは、その間の打席だ。