炎の一筆入魂BACK NUMBER
なぜ広島は野手と投手に溝がないか。
「黒田さんの教えがあるんだと」
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2018/06/23 09:00
セ・リーグ首位に立っているものの、3連覇に向けては予断を許さない。新井貴浩の言葉通り、チームは団結できるか。
エルドレッドもフォア・ザ・チーム。
2人のベテランが教えてくれた教訓を胸に、25年ぶりの優勝で得た成功体験が今も広島には根付いている。
その伝統が、外国人選手にも受け継がれようとしていることがまた、広島らしい。
広島には複数年在籍した外国人が多く、アカデミー出身も3選手いる。広島の教えを目の当たりにしてきた選手たちだ。外国人選手最年長であり、在籍年数が最も長い“ベテラン”ブラッド・エルドレッドは今や広島の伝統を継承する側にいる。
来日7年目の今年はスタメンから外れる機会も増え、代打が主戦場となりつつある。指名打者制が敷かれたパ・リーグ主催試合が続いた時期には、1番から9番までのスタメンを固定されたため二軍降格となった。
それでも来月38歳を迎えるエルドレッドは「他の選手と同じようにスタメンで出たいという強い気持ちを持っています」とプロとしてのプライドを口にしながらも、こう続ける。
「スタメンじゃなくても、僕にしかできないこともある。チームメートのため、それからチームのためにできることはいろいろあると思う」
個人プレーには走らないで戦う。
たとえばまだ若く、経験の浅いサビエル・バティスタとともに一軍にいるときは、ベンチの隣に座り、助言も惜しまなかった。
外国人枠を争う相手であり、現に今、バティスタは一軍にいて、エルドレッドは二軍にいる。それでも、「家族的なチーム」の広島で自分がやるべきことだと認識している。
「うちには素晴らしいベテランと言われる、新井や石原(慶幸)がいる。彼らを見たら分かるように、個人プレーには走らない。チームのために何ができるか考えて取り組んでいるんだ。コーチから言われるよりも、現役選手が体現していることを見ていることが大きな影響がある。彼らに負けないように、そういった姿を見せようと意識している」
一昨年、昨年と違い厳しい戦いとなった今年の前半戦も、ベテランたちが支える土台の上で、何とか首位で乗り切ろうとしている。セ界一のゴールへ、後半戦こそ広島の組織力が問われる。