サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
森重真人はW杯にギラついている。
「俺なんて」が口癖だった男の変貌。
posted2018/05/17 08:00
text by
馬場康平Kohei Baba
photograph by
Koki Nagahama/JMPA
あの日から諦めることをやめにした――。
もう6年以上前の話になる。FC東京が、J1再昇格した2012年。気の置けない仲間たちが集まり、森重真人を囲んでいた。そこで日本代表の話になると、友人たちは矢継ぎ早に口を開いた。
「モリゲが何で代表に呼ばれないのか不思議だよね」
「確かに、何でなんですかね」
「必ず、真人が必要になるでしょ」
話題の中心にいた男は、1人黙ったまま、少しバツが悪そうにしていた。それまで、日の丸への思いをひた隠しにしてきた。周りから日本代表の話を振られても、決まって首を傾けて「まだまだそんなレベルの選手じゃない」と言い続けてきた。
あの日も、例のごとくお決まりのフレーズで話をそらそうとした。
「そう言ってもらえるのはうれしいんですけど、俺なんて……」
そう言いかけた瞬間、また一斉に声が重なりあう。
「いやいや、ワールドカップに出なきゃいけない選手でしょ!」
無理やり言った言葉が、目標に。
もう、その場を収めるためには、言わざるを得なかった。照れ笑い、いや苦笑いだった。
「俺、代表に入ります」
その宣誓に、周りは「ついに言ったぞ」、「聞いたからな」、「言質を取った」と声を上げた。
ブラジルワールドカップ(W杯)を目前に控えた4年前、その当時の話を彼はこう振り返っている。
「正直に言えば、当時は代表に入りたいという思いはそれほど強くはなかったかもしれない。仲間とそういう話をして、『入らなきゃいけない』って思ったというより、仲間に『お前が入らないとダメだ』って言われて、無理矢理言った言葉だった。でも、それが自分の目標を作る上で大切だったのかなって。自分を見つめ直す意味でも」
無理やりに着けられた、種火は静かに燃えていく。その後は「日本代表に」と、たきつけた周りも驚くほど彼のサッカー人生は好転していく。