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イングランドの3-4-1-2が結構強い。
長期計画のスタイル変更が遂に実る。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2018/03/31 11:30

イングランドの3-4-1-2が結構強い。長期計画のスタイル変更が遂に実る。<Number Web> photograph by Getty Images

デル・アリら俊英が伸び盛りのイングランド。ロシアW杯に向けても期待値が上がっている。

お膳立て役はデル・アリと見られていたが。

 フィジカルに優れたウォーカーは、クラブでチームメイトのストーンズとの呼吸も上々である。CBの選手に3バックのサイドを任せるとアウトサイドへの対処が課題となりがちだが、そこに違和感を覚えることもない。

 他にもエリック・ダイアーやフィル・ジョーンズのようにCBとボランチを兼任できる選手がいるが、ウォーカーも融通の利くDFであることが確認され、攻撃陣に回せる招集枠が1つ増えたと考えられる。

 もう1つの注目点は攻撃面での創造性だった。予選突破時点でのイングランドは格下を攻め崩せない試合が多く、ファンをやきもきさせた。「国際タイトル以前に母国ファンを取り戻すべきだ」と言うメディアもあったほどだ。

 フィニッシャーには、予選突破を決めたスロベニア戦(1-0)で決勝点を決めたハリー・ケインが君臨する。3月上旬から怪我で戦列を離れているが、4月中に復帰の見込み。CFのオプションには、積極性が光るマーカス・ラッシュフォード、スピードのあるジェイミー・バーディーもいる。そんな中チャンスを生み出す創造力は、クラブでもケインの同僚の21歳デル・アリに依存すると思われていた。

目立ったスターリングとリンガードの仕掛け。

 ところが、サウスゲイトが3-1-4-2を採用した最終オーディションで別の化学変化が起きる。2トップの一角に入ったラヒーム・スターリングと、2列目中央のジェシー・リンガードの連係が、アタッキングサードでの攻撃に流れと勢いを生み出したのだ。

 リンガードはオランダ戦でゴールを決め、イタリア戦では素早いFKでバーディーの先制点をアシスト。そのFKはスターリングが獲得している。今季ユナイテッドで好調なリンガードが交代時に拍手喝采を浴び、シティで一皮剥けたスターリングが仕掛けるたびに会場のウェンブリーは沸き、ファンの代表熱が戻ってきていると感じられた。

 2人とは対照的に、アリは2試合で20分強の交代出場にとどまった。それを踏まえればロシアW杯初戦となるチュニジア戦でも、スターリングとリンガードに先発の可能性がある。負けないことが初戦の鉄則とも言われるが、ベルギーとの3試合目にグループステージ突破を懸ける事態は避けるべきで、この試合はアンカー1枚の2トップで勝ちに行く戦い方が妥当で、パナマとの2試合目にも同じだろう。

 更に言えば、強国との対戦時にも、3-4-3が5-2-3(5バック+2ボランチ)となるような戦い方は望まれていない。復活途上にある現代表に国民が求めているものは「進化」を実感できる具体的な証拠だ。ベスト8なら立派な成果として受け止められるに違いない。

【次ページ】 ロシアW杯は代表復活への通過点として。

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