マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
プロ野球に選手を送り出す監督たち。
風呂、宗教……心配の種は多種多様。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/02/23 16:30
國學院大から3位で楽天入りした山崎剛。送り出した鳥山泰孝監督は、オーバーワークを一番心配しているという。
人と一緒にお風呂に入れない、という子も。
昨秋のドラフト会議を経て、この春も114人のルーキーたちがプロ野球に進んだ。
次の舞台にやって来た者がいれば、その後ろに、必ず「送り出した者」がいる。
大きな期待をかけながら、かたわらで何年か、いつも間近で見てきた選手だから、いまだ足りないもの、つたない部分……そんな心配の種をいちばん知っているのも指導者たちであろう。
「体格、野球の実力、故障歴……あと、国籍とか地域差、寒い所の子だから関東、近畿の暑い土地でだいじょうぶだろうか? そういうことは、どんな指導者でも心配してるでしょうけど、そうですねぇ、選手の数だけ心配の種類があるって、そんな感じですね」
多くの教え子をプロに送り出してきた、ある監督さんが“今”らしい話をしてくださった。
「みんなと一緒に風呂に入れない子がいたんです。抜けた実力があったし、評価も高かったんで出しましたけど、まさか、そんなことで心配するとは思いませんでしたね」
キャッチングに<トラウマ>を持った捕手をプロに送り出した監督さんもいる。
「ブルペンで受けてて、サイン違いのストレートを肩に受けて、鎖骨を折りましてね。それから怖くなったみたいで、それからは、自分で変化球のサイン出しても、“ストレート待ち”してるそうです」
ヤツから電話があるたびに、ドキッとしてますよ。 ちょっと辛そうに笑っていた。
寮でお経を読んでいさかいに。
笑えない話も多い。
「ある宗教をすごく熱心に信仰している家庭の息子さんがいて、ウチにいるときも、特に許してお経っていうんですか……寮でもやらせてたんですけど、プロに行って、たまたま同じ球団に、対立する宗教の選手がいたんですね。その選手は、人前で宗教行為をしてなかったんで、事前にわからなかった。で、結局その選手といさかいになって……」
それからは、選手に何か事情がある場合、考えられる困ったことをいろいろ想定して、入団するチーム事情をそれとなく確かめたりしているという。