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ミランにガットゥーゾが帰ってきた!
愛と罵倒は堕ちた名門を救うのか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2017/12/15 11:30
ガットゥーゾほど、現役時代とイメージが変わらない指導者も珍しい。その魂は弱りきったミランに乗り移るのか。
「走行距離でケツから2番目とはどういうワケだ?!」
今年の夏、古巣に呼ばれてユースチームの監督を請けた。旧知の友人であるモンテッラの指導するトップチームの窮状は見聞きしていたが、いざ自ら指導に当たってみると、ミランは重症だった。
打たれ弱く、先に失点したら反撃できない。データを見たら、あらゆるチームに走り負けていた。
「チーム別走行距離で、うちがケツから2番目とはどういうワケだ?!」
芝を顔中に貼り付けながらグラウンドを駆け回ったガットゥーゾにとって許せないのは、ボールホルダーに自由にプレーさせることと、相手に走り負けすることだ。
前任者が好んだ、ボールを用いた練習メニューを即刻止めさせると、ガットゥーゾは単純な走り込みを大幅に増やした。結果はすぐに出なくても、シーズン後半戦やチームの将来を考えればやらせないわけにはいかない。
「このチームには(練習でも試合本番でも)インテンシティが足りない。相手に走り負けない“脚”は絶対必要だ。選手たちのフィジカルやメンタルを変えるにはひと月、いやひと月半は欲しい。それも言い訳にならないことはわかってるが、今のミランにはもう何の猶予もない。勝つしかない」
ミランは債務超過で思いペナルティが濃厚……。
巷では、ガットゥーゾの監督ポストは今季終了までと見られている。ファッソーネCEOら経営陣は来夏の大物指導者招聘を考えており、ガットゥーゾの任期はあくまで本命までの暫定的なものという見方だ。
ただし、事態は流動的といえる。中国資本下となったクラブ自体が、UEFAから鉄槌をくらいそうなのだ。
債務超過によってFFP(ファイナンシャル・フェアプレー)制度の罰則規定に抵触することが確実なミランは、処分保留を求める請願書を先月UEFAへ提出した。内容審査の正式発表は今週中と見られているが、ミランの請願は却下されることが濃厚だ。そうなれば罰金処分や移籍市場での取引停止、果ては欧州カップ戦への出場制限といった重いペナルティは避けられないだろう。
李会長ら新経営陣が、ミラン買収のために借り受けた米国ファンドからの3億ユーロ超の返済についても、かなり危うい橋を渡っているように思えてならない。