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ミランにガットゥーゾが帰ってきた!
愛と罵倒は堕ちた名門を救うのか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2017/12/15 11:30
ガットゥーゾほど、現役時代とイメージが変わらない指導者も珍しい。その魂は弱りきったミランに乗り移るのか。
監督としての初戦で、歴史に残る赤っ恥。
しかし、ミラン監督ガットゥーゾの初陣は惨憺たるものだった。
就任1週間で迎えたセリエA監督デビュー戦の相手は昇格組ベネベント。開幕以来14戦全敗、欧州1部リーグ史上最弱といわれる彼らに、ガットゥーゾのミランは勝つことができなかった。
2-1でリードしていた95分に、相手FKから同点ゴールを許しただけでも間抜け扱いは免れないのに、よりによって攻撃に関しては素人のGKブリニョーリに破れかぶれのヘディングゴールを決められてしまったのだから目も当てられない。ミランは歴史に残る赤っ恥をかいたのだ。
「試合最後のプレーでGKに得点されるなんて、ナイフで腹にブスリとやられた方がマシだよ」
新監督の物騒な嘆き節も飛び出した “ベネベント・ショック”から5日後、ミランはELでも失態を晒した。リエカへの遠征で0-2の大会初黒星を喫したのだ。
すでにグループリーグ突破を決めていたから良かったものの、ベネベント戦から先発10人を入れ替えた新指揮官の采配には、早くも懐疑の目が向けられた。
「真夏の夜の夢よ、さらば。だが、悪夢はつづく」(『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙)
ガットゥーゾのミランの門出は最悪だった。
頼れるオヤジは、SNSアカウントなんて持っていない。
精悍そのものだった現役時代に比べると目尻が下がり、腹回りにとっぷりと肉がついた監督ガットゥーゾは、選手たちの兄貴分というより、“頼れるオヤジ”の風格がついている。SNSアカウントなんてものは持っていない。
元サッカー選手というより、腕一本で稼ぐ南イタリアのオリーブ農家経営者という風体だ。
'12年夏からシオン(スイス)でプレイングマネージャーの経験を積み、セリエB時代のパレルモやギリシャを渡り歩いた。'15年に3部ピサの監督に就任するとクラブの財政危機と戦いながら2部昇格を果たしたが、2年目にあたる昨季、42試合でわずか23ゴールという得点力のなさに泣いて降格した。リーグで2番目に失点の少なかった堅守のチームが降格するという珍ケースだった。