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ミランにガットゥーゾが帰ってきた!
愛と罵倒は堕ちた名門を救うのか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2017/12/15 11:30
ガットゥーゾほど、現役時代とイメージが変わらない指導者も珍しい。その魂は弱りきったミランに乗り移るのか。
セードルフ、インザーギ、モンテッラが散り……。
近年、ミランの監督職には、かつての名手セードルフや名ストライカーだったインザーギ(現ヴェネツィア監督)が場当たり的に登用され、結果的に彼らが使い捨てにされていったことを、世界中の指導者やサッカーファンは目撃してきた。
諸々の悪条件が揃った今のミランの監督ポストを快諾してくれる人間は、世界中くまなく探してもダミ声で義侠心に厚いガットゥーゾ以外いないのだ。
本当に強いチームとは何だろう。
テクニックのあるチームだろうか。それとも戦術に優れ、攻撃力も守備力もあるチーム?
現役時代、ガットゥーゾは師と仰ぐアンチェロッティとリッピのために走って、走って、走りまくった。
本当に強いチームとは、選手が“監督を男にしたい”と慕うチームじゃないかと思う。ガットゥーゾがセリエAを去った5年前、スクデットを獲った闘将コンテ(現チェルシー)が率いたユベントスもそんなチームだった。
第4審判の注意など聞かず、せわしなく動き回る。
10日の16節ボローニャ戦で、ガットゥーゾはかつての我が家サン・シーロに帰ってきた。
試合途中からちらつき始めた雪が後半から本降りになっても、マフラーもダウンジャケットも羽織ろうとしなかった。
4-3-3に回帰したミランは、プレーのテンポを早め、球離れが良くなっていた。“闘犬”の後継者であるMFケシエがパワフルに中盤を支配し、前主将モントリーボが捌いて、FWボリーニが前線をかき回した。
先制した後に追いつかれたが、60分に指揮官はFWクトローネを入れ、4-4-2にスイッチ。“何としても勝つぞ!”とグラウンドにメッセージを送った。MFボナベントゥーラの決勝ヘッド弾が生まれたのは76分だった。
どこかの伊紙がセリエA監督デビュー戦でのガットゥーゾを「ベンチにいる彼はまるで檻に閉じ込められた猛獣だ」と書いていたが、サン・シーロでの彼は第4審判の注意など聞く余裕もなく、テクニカルエリアを出てせわしなく動き回っていた。