サッカー日本代表「キャップ1」の男たちBACK NUMBER
伝説のスーパーサブ森山泰行の今。
代表1キャップで感じたカズの理念。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byEijinho Yoshizaki
posted2017/12/08 11:30
高校サッカー激戦区の1つ、埼玉で指導する森山。自らのサッカー人生で得たものを育成年代に還元する。
森山は今、190人超の高校サッカー部監督を務める。
たった一度の日本代表での過ちに気づき始めたのは、2014年に現職の浦和学院高サッカー部の監督を始めたころからだ。190人超の大所帯。今秋は全国高校サッカー選手権埼玉県予選準々決勝で残り3分までリードしながら逆転を許し、同校14年ぶりの県ベスト4を逃した。
今の持ち場で、自ら「元日本代表」という話はほとんどしない。
「周りの人が言ってくださいますから。『でも、キャップ1だけどね』と心のなかで思いはしますよね。言ってくれるんだ、ありがとう、というだけで。それを武器にしようとは思っていませんよ」
10代からエリートとして育ちながら、結局国際舞台では「キャップ1」の実績で終わった。それを悔やんでいるのか。あるいは日本代表に選ばれたことが幸せなのか。48歳になった現在、28歳での出来事をどう感じているのか。
日本代表歴にすがって自分を守って終わりたくない。
「あくまで評価を決めるのは周囲なので。そこに自分は左右されないようにしています。今は、キャップ1が恥ずかしくもないし、嬉しくもない。もちろん個人的な感情を言えば、悔しい、という思いもあるし、1試合プレーできたことが嬉しいという部分もある。一方で、周囲の評価は日本代表になれたことがすごいね、と言ってくれる人もいるし、1試合で終わったの? という人もいる。
ただ、結果的に何かが足りなかったから1試合で終わったわけで。重要なことは『日本代表キャップ1』という、自分に現実的に残ったこの数字を今の人生でどうプラスに持っていくかということですよ。ネガティブに考えていちゃ、その呪縛からは逃れ得ない。僕、常に人生は『これからが大事』だと思っているんで。日本代表歴にすがって自分を守って終わりたくない。いっぽうで肯定もして、良かったことだったとも考えようと」
日本代表キャップ1の男として、今の高校生に教えられることは明確に存在する。
「日本の強さを持ちながら、海外で戦える選手。そういった選手を育てたいです。損得じゃなく、善悪で動ける人間。誰が為に、どれだけやれるのか」