フランス・フットボール通信BACK NUMBER
9000枚のユニフォームを集めた男。
欧州サッカー界の名物会長を悼む。
text by
ジャンマリー・ラノエJean-Marie Lanoe
photograph byPatrick Gherdoussi/L'Equipe
posted2017/07/19 11:00
その広大なミュージアムでコレクションを見て回るのに、ニコラ会長は電動カートを使っていた。
パパン、リベラらのユニフォームが欠けている……。
友人たちとの絆の跡は他にもたくさん見られる。
若きプラティニがナンシー・ロレーヌで着用していたものや、ミシェル・メズィが'80年フランスカップ準々決勝、モンペリエ対サンティエンヌ戦で着用したもの、そしてヨハン・クライフが、ニーム対アヤックスの親善試合で着ていたもの……。
それぞれのユニフォームに物語があり思い出がある。それを収集するのは、ニコランにとって過去との対話であり今日の自分のアイデンティティ――自分が自分であることの証明でもあった。
これだけ集めながら、欠けているものがまだ幾つかある。
「ジャンピエール・パパンがバロンドールを受賞した年('91年)のユニフォームがそうだ。ジャンニ・リベラ('69年の受賞者)のものもない。彼は今、EUの議員になっているが、なかなか手に入れる機会がなくて……」
その機会が永遠に失われたのが残念でならない。