藤田俊哉の日欧蹴球比較論BACK NUMBER
ジダン、ロナウドは練習から別次元。
藤田俊哉が受けたレアルの衝撃。
text by
藤田俊哉Toshiya Fujita
photograph byToshiya Fujita
posted2017/06/28 11:00
カーディフでの決戦はもちろんだが、試合までにレアル・マドリーが歩んだプロセスがさらに興味深かったのだという。
試合前のシュート練習、パス出し役はジダン。
一般的なのはユベントスの監督アッレグリのスタイルだろう。僕が所属しているVVVフェンロでも、試合前日トレーニングは同じように臨んでいる。
一方でレアルのトレーニングは、それとはあまりに対照的なものだったので、見ていて引き込まれた。
監督であるジダンは、終始緊張感のある、テンションも高いトレーニングを見せてくれた。極めつけは最後に行なっていたポストシュート。自らパサー役になり、しなやかなプレーで選手にパスを送り続けた。
メンバーのプレーフィーリングもつかめるし、選手とのコミュニケーションの場にもなる。「これは良いな!」と感じた。監督の華麗なプレーを楽しみながら、それをも上回る質の高いプレーをしようと、選手達も意欲的に取り組めていた。
メディアでは戦前、「攻撃力のレアルvs.鉄壁の守備のユベントスとなるだろうから、スコアも僅差の戦いになる」と報道されていた。そんな僕らの予想を1人の選手が一変させてしまう。
それが今大会の得点王、ロナウドだった。
ロナウドの2点目で、スタジアム内の時間が止まった。
彼の一連のアクションから放たれた一撃はこの試合の流れを大きく変え、勝敗を決定づけた。スタートダッシュに成功したはずのユベントスは、ロナウドの一撃により完全に出鼻を挫かれてしまった。
すぐに反撃に転じ、マンジュキッチの鮮やかなシュートで同点に追いついたユベントスも流石だった。それでもユベントスは大会MVPを獲得したロナウドに最後まで苦しめられた。この試合でのモドリッチ、クロース、イスコやマルセロなどの活躍も素晴らしかったが、それでも“主役”はロナウドだった。
ユベントスが築き上げてきた自信は、彼の研ぎすまされた決定力に打ち砕かれてしまった。特にレアルが3-1としたロナウドの2点目が決まった瞬間は、スタジアムが静まり返った。信じがたいが、スタジアム内の時間が止まってしまったかのようだった。
異次元でプレーしているかのような彼も、前半15分まではゲームに関与できていなかった。しかし、たったワンプレーで得点に繋げてみせた。さらに後半には前述した通り、試合を決定づけるゴールも決めた。