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目新しい事をせず、ただ勝利する。
ジダンがいる限り黄金期は続く。 

text by

井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byAFLO

posted2017/06/09 11:00

目新しい事をせず、ただ勝利する。ジダンがいる限り黄金期は続く。<Number Web> photograph by AFLO

ジダンがなぜ勝てるのか、に対する明確な答えはまだない。しかし、ジダンが勝つ監督であることはどうやら間違いなさそうだ。

モウリーニョの策謀も、ペップの戦術も必要ない。

 どこにも嘘がない人。正真正銘のビッグスターなのに、セレブリティのような振る舞いをちっともしない。その澄んだ瞳と人間性こそ、ジダンを成功に導いた大きな要因ではないだろうか。

 ファイナルの公式プログラムのインタビューでは、対戦相手の古巣ユベントスで「人間として成長させてもらい、ひとりの男になれた」と感謝を示している。「でも試合が始まれば、(今の)自分のチームのことしか考えないよ」と続け、実際に全力を尽くして世話になったクラブを下した。スポーツの世界では、これをリスペクトと言う。

 ジダンはCLのたった20試合目で連覇を果たし、また新たな歴史を作った。ジョゼ・モウリーニョの得意な策謀や、ジョゼップ・グアルディオラが誇る先鋭的な戦術も必要とせずに。

「私が世界最高の監督? いやいや、それはない」

 決勝後のストレートな質問に、彼はそう答えた。その日何度も見せた白い歯がまたこぼれた。ここ4シーズンで3度のCL優勝を遂げたレアル。この静かな名将がいるかぎり、黄金期はこれからも続くだろう。

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