セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
優勝経験なしでも、CL史上最高のGK。
ブッフォン「俺自身、一度は諦めた」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2017/06/02 11:30
ブッフォンが悲願のCL制覇を成し遂げてキャリアに幕を引く。そんな夢のような結末が、現実のものとなるのだろうか。
1ゴールに値するセーブができる、数少ないGK。
バルサとの1stレグの21分に、ブッフォンが見せたスーパーセーブが目に焼き付いている。
FWメッシのスルーパスに、阿吽の呼吸で走りこんだMFイニエスタがゴール左前で合わせた。何度となく相手を崩してきたバルサ黄金の得点パターン。ボールは誰も届かないタイミングで、右ポストの内側に転がっていくはずだった。
あっと思うより早く、半分宙に浮いたブッフォンの左手はボールを弾いていた。神業だった。
もしあのアウェーゴールを許していたら。パリSG相手に4ゴール差をひっくり返したバルセロナとのカードの行方はどう転がっていたか、誰にもわからない。
先制点を決めていたユーベFWディバラが追加点を叩き込んだのは、守護神が淡々とビッグセーブを見せた直後だった。
相手の戦意を挫き、味方の背中を押す。1ゴールに値するプレーができるGKは、いつの時代にも数えるほどしかいない。
レアルは11度、ユベントスは2度しか優勝していない。
CLで優勝11度を誇るレアル・マドリーに対し、ユベントスの戴冠歴は2度だけだ。最後にビッグイヤーを勝ち獲ったのは21年前、1996年に遡る。
名将リッピに率いられた当時のユーベは、以降3年連続でファイナル進出という離れ業を成し遂げた、掛け値なしに欧州最強のチームだった。
アヤックスを下したチームの主将はFWヴィアッリで、傍らには若き日のデル・ピエロがいた。胸に「SONY」の白抜きロゴが入り、肩に大きな黄色い星が描かれた、光沢のある青のアウェー用ユニは、たまらなく格好よかった。
しかし、“イタリアの老貴婦人”は、それからCLファイナル4連敗という不名誉に甘んじてきた。