セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
優勝経験なしでも、CL史上最高のGK。
ブッフォン「俺自身、一度は諦めた」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2017/06/02 11:30
ブッフォンが悲願のCL制覇を成し遂げてキャリアに幕を引く。そんな夢のような結末が、現実のものとなるのだろうか。
勝てば、ブッフォンについにバロンドールが?
両クラブの戦力はイーブンというジダンだが、守備の鉄壁ぶりでは、さすがに大会最少3失点のユーベに軍配を上げる。
ユーベが誇る守備の“BBCトリオ”とともに、FWクリスティアーノ・ロナウドらレアルの攻撃陣を完封できれば、今年のバロンドール有力候補はブッフォンだろう、との声も強くなり始めた。
ブッフォンの欧州カップ戦通算出場試合数は、今季100を越えた。「正直もっとあると思っていたからムカついたね」と軽口を叩いた主将だが、ユベンティーノたちは'06年にカルチョーポリが発覚し、セリエBに無念の降格をしたときも、その後のクラブ再建のために費やした数年間も、ブッフォンがユーベを見離さなかったことを知っている。
1995年の秋、あどけない顔のGKが当時世界最強を誇ったセリエAにデビューした。
17歳だったブッフォンは、ウェアやバッジョといった怪物FWを抱えたミランを完封して世に出ると、21歳でUEFA杯を制した。
世代交代の荒波の中で、彼は刻すら止めてしまった。
常勝軍団ユベントスに移籍したとき、「ゴールマウスはあと10年安泰だ」と言われたものだが、彼は10年どころかさらに7年を過ぎようとする今も、欧州の頂点に挑むレベルを維持し続けている。
デビューしたときにいたセリエAの同業者は、全員とっくに引退した。同年代のライバルだけでなく多くの年下GKたちがブッフォンを目指し、ブッフォンに敗れ、ブッフォンより先に消えていった。
今や「ブッフォン」の名は、古今東西を問わずGKのベンチマークの意味を持っている。
サッカー界の世代交代の荒波の中で、ブッフォンだけは悠然と動かない。不老不死の彼は相手のシュートだけでなく、刻すら止めてしまった。
“史上最高のゴールキーパー”の称号も誇張ではない。米俳優トム・セレクを真似た口髭と相まって、ブッフォンは伝説の世界に生き、歳をとることを知らない仙人のようだ。