セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
優勝経験なしでも、CL史上最高のGK。
ブッフォン「俺自身、一度は諦めた」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2017/06/02 11:30
ブッフォンが悲願のCL制覇を成し遂げてキャリアに幕を引く。そんな夢のような結末が、現実のものとなるのだろうか。
「今季はCLファイナルで勝つことを想定してきた」
ユベントス指揮官アッレグリの汚名返上にかける意気込みは、並々ならないものがある。智将は語気を強めて言う。
「2年前と今年とでは、決勝進出の意味合いがちがう。2年前の大会で得た決勝戦のチケットは無欲で戦った結果得られたもので、我々はノーマークの存在だった。しかし、今季はシーズンが始まる前からCLのファイナルを目指し、そこで勝つことを想定して戦ってきた」
困難やリスクを承知で、狙って勝ち獲ったファイナル進出なのだ。その価値は2年前の何倍も重い。
無欲だった分、2年前には故障者が多く、ユーベは満身創痍で決勝に臨まざるをえなかった。同じ轍は踏まない。今季、智将アッレグリはフィジカル・コンディションに万全を期して挑む。
「晴れやかな心と正しいメンタル・アプローチ、そして“自分たちは絶対勝てる”という確信をもってキックオフに臨みたい」
1998年、レアルに負けたユーベの21番はジダンだった。
ユーベの挑戦を受ける現王者レアル・マドリーは、決勝戦で無類の強さを誇る。
過去通算14度の決勝で勝つこと11回。欧州中のクラブが敬意と畏れを抱く由縁だ。
'98年、アムステルダムでの決勝では、ユベントスをFWミヤトビッチのゴールで葬った。今でもトリノでは「あのゴールはオフサイドだった」と恨み節が絶えない。
ユベントスが優位とされていたその試合で、ビアンコネーロ(白・黒)の背番号21をつけ、優雅なパスを放っていたのがMFジダンだった。
ジダンは3年後にレアルへ移籍し、'02年に念願だった大会を制した。引退後もマドリードに残り、指導者となった彼は昨季、監督としてもビッグイヤーを獲得した。
今季はリーガも制し、いよいよ名将への道を歩み始めた。ジダンは、愛する古巣との決勝戦を心待ちにする。
「ユベントスとのカードは、私にとって特別な意味がある。あそこでの5年間で、私はただの若造から大人の男になった。ユーベこそ、私を一人前のサッカー選手に育て上げてくれた懐かしき古巣だ。互いの実力は五分五分だと思う。素晴らしいファイナルになるだろう」