“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-20のGK山口瑠伊って、誰?
日仏での文武両道サッカー人生。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO
posted2017/05/21 08:00
ホンジュラス戦での山口。所属するFCロリアンは2006年以来ずっとリーグアンに所属するクラブである。
混沌としているU-20代表の守護神争い。
そして今、チームにおいて“守護神争い”は混沌としたものになってきている。
1次予選、最終予選と守護神としてゴールマウスを守ってきた小島亨介(早稲田大)が、今年4月に負傷し、ギリギリ今大会に間に合った状態で登録されたこと。
1次予選、最終予選と代表メンバーに入らなかった波多野が、FC東京U-23で活躍したことにより本大会で突如メンバー入りを果たしたこと。
では3人のうち、誰が守護神の座を掴むのか。
国内最後の試合となったホンジュラス代表戦は、前半に小島、後半に波多野が出場し、山口に出番が来たのは後半の最後と、その後に行われた30分1本の練習試合だった。
この起用は、現時点では3番手のGKという位置づけを意味したが、だからと言ってU-20W杯のピッチに立つチャンスが完全に失われた訳ではない。
「3番目に出た悔しさは当然あるけど、そこで何ができるかが重要だと思っていましたので。それにGKというポジションは1つしかなく、簡単に代えられるところではないからこそ、よりいつ来るか分からない出番に向けて、常に100%の準備をしておかないといけない。それがGKの宿命であり、大事なことだと思っています」
守護神としての心構えはフランスで鍛えられた。
GKの宿命を受け入れ、チャンスが来ることを信じ、彼はW杯本大会の開催地・韓国でチームのために全力を尽くす。
フランス代表よりも日本代表で戦うことを選びたい。
ホンジュラス戦の後、彼に改めて「山口選手にとって、日本代表とはどういう存在なの?」と聞くと、彼はこう返してきた。
「僕にとって日本代表は特別なんです。フランスで生まれて、今はフランスでプレーをしているけど、やっぱり僕は日本で育ったという意識が強い。
僕は日本代表に対して、“レスポンシビリティー”を重く感じているんです。だからこそ、僕はもしフランス代表の可能性があっても、日本代表になりたいと思っています。
むしろ今回のU-20W杯やその先でもやっぱりフランスと戦いたい。その時が来たら、当然僕は日本の勝利のために戦いたいです」
レスポンシビリティーとは責任、責務。
日本を愛し、日本人であることに誰よりも強い誇りを持っている。それはフランス人ながら、日本の武道を愛し、日本の心を愛した父から色濃く引き継いだ血だ。
「文武両道」と「大和魂」、そして「グローバル」――。
この3つの要素を併せ持った山口瑠伊は、ただの第3GKではない。
一気に主役に躍り出る可能性を十分に秘めた、日本の将来を担う重要なタレントの1人なのだ。