“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-20のGK山口瑠伊って、誰?
日仏での文武両道サッカー人生。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO
posted2017/05/21 08:00
ホンジュラス戦での山口。所属するFCロリアンは2006年以来ずっとリーグアンに所属するクラブである。
FC東京のユースからフランス1部クラブのユースへ。
「『どちらか1つ』だったので、3カ月くらい迷いました。でも、僕はサッカーをやっているときが一番楽しかったので、サッカーにしました」
その決断を、瑠伊は母親の前でこう伝えた。
「僕、サッカーをやる。サッカーをやって絶対にプロになって、オリンピックやW杯に出るよ」
この時から、その恵まれた身体能力はすべてサッカーに注がれるようになった。
中学に進学すると、FC東京U-15深川に進み、GK廣末陸(現・FC東京)と切瑳拓磨しつつU-18に昇格。そこでは今大会のメンバーでもあるGK波多野豪(現・FC東京)ともしのぎを削ることになった。
しかし、高1の夏に瑠伊は大きな決断を下す。
FC東京U-18を辞め、単身でフランスの1部クラブであるFCロリアンのユースへ移籍することにしたのだ。
その理由は、彼が目指す“文武両道”にあった。
人生における「プランA」と「プランB」を考えた。
彼が通っていた東京のリセ・フランコ・ジャポネは、勉強をしっかりと行う学校であり、彼はそこで一般的な科目とフランス語、英語、スペイン語などの語学を同時に学んでいた。しかし、学校の場所がFC東京U-18の練習場である小平から離れており、毎日片道2時間、往復4時間の移動を強いられ、徐々に勉強とサッカーの両立が難しくなっていたのだ。
「僕には人生において『プランA』と『プランB』があるんです。『プランA』は順調にサッカー選手になること。『プランB』では、そうなれなかったときに勉強で上を目指す、ということです」
両方のプランを遂行するためには、現状を変えないといけない。
フランスのクラブは教育にも力を入れているところが多く、中でもロリアンは学業と生活態度など、十代における教育面で必要な総合的な生活サポートを実施しているクラブだった。
しかも、サッカーの能力が高くとも人間性な部分で問題があれば選手を受け入れないという、道徳的にも厳粛なクラブであった。フランス人である父親の実家からも近いという地理的要素もあり、結局、自らで移籍の決断を下すに至った。