マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
高橋純平を睨み、見守る“鬼”が1人。
担当スカウトが選手のためにする事。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/02/15 07:00
プロ入り時にソフトバンクの歴史に残る好条件で契約した高橋純平。2年目の19歳だが、周囲の期待はすでに過熱しはじめている。
ここ一番で最大値を出せること自体が能力である。
1年目の昨季は、高校時から引きずってしまった左太もも肉離れの完治を優先させて、無理に一軍デビューさせなかった。その代わり、ウエスタンでは初夏からの後半戦で7試合28イニング、先発でもリリーフでも投げて防御率2.22。2年目の今季への確かな足がかりを構築していた。
「夏のフレッシュオールスターで、1イニングしか投げてないのに154キロかな……? ちゃんと、自分のMAXを出してるんだよね。ここ一番っていうの? ここで目立っておけばっていう場面で、自分の最大値を出せるってこと自体、能力の高さだもん。持ってるものは間違いないってことだよね」
普段はなかなか選手をほめない人が、高橋純平を認めている。
「べつに、自分が担当した選手だからひいきで言ってるんじゃないし。プロに入ってみてどうなのか……っていうことも、やっぱり責任あるわけでしょ。そりゃあ心配は心配だけど、それ以上にチームにとってどうなのよって、そっちだからね、大事なのは。ヤツにとっても、僕にとっても」
新人とか何年目とかは、プロでは関係ない。
プロに入ってまだ2年目になったばかり。まだまだ、心細いことのほうが多いはずの若手にとって、担当のスカウトの方が見守ってくれるって、すごく心強いのでは?
そんな素朴な感想を向けてみた。
「そんなこと言ってる場合じゃないよね、もう闘いは始まってるんだから」
温和な笑顔が一瞬にして消えた。
「新人とか何年目とか、関係ないからね、プロに入ったら。自分はまだ2年目だからどうとかこうとか言う前に、目の前のライバルたちとまず闘わないことには、先が見えてこないんだから」
ブルペンからメイン球場に戻る山崎スカウトの足取りが急に速くなって、こちらが叱られているような鋭い指摘が飛んできた。