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過去のWBCを「野球本」で読み解く!
王貞治、原辰徳らの本音の舞台裏。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byNaoya Sanuki
posted2017/02/14 11:00
第1回WBCでの王貞治監督とイチロー。国代表の威信をかけた国際大会で、日本野球の強さを証明した。
世界の王と天才イチローが牽引した'06年の侍ジャパン。
「でもね、ぼくたちも決勝リーグからはミールクーポンが150ドルに上がったんだよ」なんて笑うタフな王は、「イチロー君なんて、選手の決起集会で焼肉をふるまったらしいね。彼は数十万円も出したらしいじゃないか」と現代の天才バッターへの賛辞も忘れない。
やはり'06年の侍ジャパンは、世界の王と天才イチローの2大スーパースターが牽引したチームだったのである。
ちなみにNPBは大会後、代表選手への出場料を倍額の400万円へアップ。当初は150万円だった監督やコーチも増額されて300万円になったという。これでも己のキャリアを削り、国を背負うにはあまりに安いな……と思うのは自分だけだろうか。
もちろん代表のユニフォームを着る価値はお金では計れない。けど、彼らは野球で金を稼ぐプロ選手でもあるのだ。'14年11月には侍ジャパンをバックアップする「株式会社NPBエンタープライズ」が設立。代表選出のリスクと名誉に値する報酬が支払われるシステム作りが求められる。もちろん美味いご飯とともに。
「王さん、コミッショナー、滝鼻オーナーの三人が……」
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『原点 勝ち続ける組織作り』
(原辰徳・著/中央公論新社/2010年3月25日)
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「自分のところに要請が来る気がしていた」
監督選びが難航していた第2回WBCの日本代表チームにおいて、原辰徳は早い段階でそう覚悟を決めていたという。
結果的にこの大役を引き受け、見事WBC連覇を達成した1年後に発売された著書でも絶好調の“辰っつあん節”が炸裂。なにせ'09年は侍ジャパンで世界一、指揮を執る巨人でもリーグV3と日本一。まさに乗りに乗っていた名将・原辰徳の姿がそこにある。
常に前向きなイメージのある原監督だが、さすがに著書では「僕だって、もし選択肢があったなら巨人の監督一本に集中したかった。だが、僕を推薦してくださったのが、前回の監督の王さん、コミッショナー、巨人の滝鼻卓雄オーナーの三人だったとお聞きして、このお三方の重い決断を僕が断ってしまっては、野球界のためにならないと思った」と1年後だから言える本音をチラ見せ。