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過去のWBCを「野球本」で読み解く!
王貞治、原辰徳らの本音の舞台裏。 

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中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

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photograph byNaoya Sanuki

posted2017/02/14 11:00

過去のWBCを「野球本」で読み解く!王貞治、原辰徳らの本音の舞台裏。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

第1回WBCでの王貞治監督とイチロー。国代表の威信をかけた国際大会で、日本野球の強さを証明した。

「抑えダルビッシュ案」のとっておき秘話まで公開!!

 大黒柱イチローを何番で使うか決める際には本人に「3番はどうだ? やっぱり1番の方がいいか?」なんつってまるで朝の散歩の挨拶をするような軽やかさで相談し、片岡治大(易之)、川崎宗則、亀井善行(義行)ら控え選手たちに対しても「内外野スーパーサブの三人の存在はとても大きかった。最終的には彼らがチームを救ってくれた」と賛辞を綴る。

 そして当時話題を呼んだ「抑えダルビッシュ案」についても清々しくネタバレ。

 決勝ラウンド進出が決まり、あと2試合勝てば世界一という時、山田投手コーチと話し合い「松坂大輔、岩隈久志、ダルビッシュ有、杉内俊哉」のジャパン四天王で勝負をかけることに。

「ダルには決勝ラウンドが行われるロサンゼルスに移動する前に、『今回(決勝ラウンドで)先発はないけれど、クローザー投という形で準備しておいてくれ』と言っておいた。ダルの反応は『え? っ?』という感じだった」と楽しそうに回想。結果的に、この22歳の若者が決勝の韓国戦の胴上げ投手になるのだから、首脳陣の英断と言ってもいいだろう。

原辰徳という「ロックンロール」な存在。

 原はこう書く。

「監督というものは、いざ試合が始まったら、力を発揮する場所なんてありそうでないものだ。そこまでの仕込みと、用兵。それが一番の仕事なのだと僕は思う」

 やはり原辰徳は全体的に激しくて明るい。まさに「俺たちはロックで、あいつらはワルツ」(長州力)状態。通常の「野球」本が大人しいワルツなら、「原」本はロックンロールのようなノリのよさと読みやすさだ。

 そのスタンスの中でも、王貞治と同じく選手だけでなく、ともに戦ったスタッフへの感謝も忘れない。本書の中で原監督が「非常に心強い存在」として名前を挙げたひとりが、年上のコーチ高代延博であった。

【次ページ】 日本のWBC史上、白眉ともいえる名著は……。

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