書店員のスポーツ本探訪BACK NUMBER
シャビは確かにバルサを愛していた。
強烈な家庭と、理想のチームと。
text by
濱口陽輔Yosuke Hamaguchi
photograph byWataru Sato
posted2017/01/30 08:00
シャビとバルセロナ。相思相愛の関係性は永遠に続く。
「いつもチームメイトのことを考えるのが理想だ」
「2006-2007シーズン途中勝ち点10差を逆転され優勝を逃した事について。
それから数年が経ち、当時のことを振り返ってみると、すべての問題は各個人のエゴにあったのではないかと思えてくる。全選手が、チームに貢献するには、個人としてなにができるかを、もっと真剣に考えるべきだった。どんなにひとりががんばっても、それがチームではなく、自分のことだけのためにしていることならば、いい結果が生まれるはずはない。このシーズンからの教訓として、物事がうまくいかなくなった時こそ、自分ではなくチームを第一に考えなければならないことを学んだ。
わかりやすいのは、ルイス・アラゴネス監督が率いたスペイン代表だ。このチームは、どんなに周りに批判されようとも、みんながチームのことだけを考えていた。批判を見返してやろうと一丸になり、結果的には2008年ヨーロッパ選手権で優勝した。結局、グループのまとまりがないところに、精神的な幸せや成功はないということだ。今日も、明日もいつもチームメイトのことを考えるのが理想だ。個人はチームの役に立つべきもので、そこに十分貢献できてから自分のことを考えるべきだ」
シャビを形成するアイデンティティが、まさにここにあると思わせる表現だ。
バルセロナも、スペイン代表の仲間も愛していた。
シャビといえば、欧州選手権の優勝セレモニーでのコメントが物議を醸した事がある。
「ビバ・エスパーニャ(スペイン万歳)」
カタルーニャ人ではない、またスペイン人ではない私たちには難しい話であるが、こんなたわいもない発言が話題になってしまう国、そして地域なのだ。それでもひとつ確かなのは、シャビがスペイン代表の仲間を大事にしていること。そしてバルセロナを愛していることだ。
冒頭のバルサ退団セレモニーでのスピーチを、シャビはこんなコメントで締めている。
『バルサが僕を思うよりも、僕がバルサのことを恋しく思うだろう。』
シャビがバルサを去った今でも、この本を通して彼の人間性とバルサの空気を是非感じてほしい。