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日本一に輝いた千葉ジェッツの誘惑。
ライバル、初タイトル、理想の体験。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2017/01/13 07:00
千葉ジェッツにとって初めてのタイトルとなった、全日本総合選手権。2011年に創設された新しいチームにとって、記念すべき日だ。
去年なら、1Qで諦めていたかもしれない点差。
田臥勇太についで日本人で2番目にNBAのメンバーに登録された選手で、チームの顔でもある富樫はこう話す。
「去年だったら、少し点差が開くとディフェンスがルーズになったり、気持ちの入っていないプレーをしてしまうようなことが何度かあって。東芝(現在の川崎ブレイブサンダース)とのホームの試合で、観客の人からブーイングされるようなことも1回ありました。東芝とのアウェーの試合で50点差くらいつけられたことも……」
そして、あの2試合をこう総括する。
「今回だって2日とも、去年みたいになりかけてもおかしくない1Qの展開だったんですけど、みんなの意識が変わったから、こういう2日間になったのかなと思う。
勝てれば良かったと思うのは、もちろんですよ! でも、去年までの僕たちなら、『あぁ、負けちゃった。やっぱり川崎は強いよね』という感じだったと思うんですよ。それはブースター(bjリーグ出身のチームでは、ファンのことをブースターと表現するのが一般的)も含めて。それでも、最後まで戦ったという部分では、観客の人はもちろん、選手としても、チームとしても評価してもいいかなと思います。今年は戦えるというところを、みんなが見せているということなので。この2試合をどうとらえるかは難しいですけど、そこはポジティブなところですね」
18点差を猛追するきっかけは、阿部のワンプレー。
2試合でMVP級の活躍をみせたのは、いつもベンチから出てくるポイントガードの阿部である。あきらめムードが漂いそうな状況で彼がみせた闘志がなければ、会場にいる者を失望させる時間になっていてもおかしくはなかった。
例えば、初日の試合の18点差がついていた第4Qの残り8分56秒。相手のゴール裏からのスローインに阿部が体ごとつっこんでボールを奪いにいったところから、驚異の追いあげがはじまった。まるで1点差のような阿部のハッスルにチームメイトがついてきたのだ。途中出場ながら2本の3Pを決めて、攻撃でも猛追の立役者となったルーキーの原修太はこう話す。
「僕は少し前まで怪我をしていて、ベンチの外から阿部さんのプレーをよく見ていました。数字などにはあまり出ないかもしれないけど、ディフェンスなどでチームに勢いをもたらしたりしているなと感じていて。だから自分も交代で出たら、そういう面を頑張ることを考えていました」