バスケットボールPRESSBACK NUMBER
日本一に輝いた千葉ジェッツの誘惑。
ライバル、初タイトル、理想の体験。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2017/01/13 07:00
千葉ジェッツにとって初めてのタイトルとなった、全日本総合選手権。2011年に創設された新しいチームにとって、記念すべき日だ。
敗因は表面的に見れば3Pの成功率だが……。
あの2試合に、もう一度、話を戻そう。
12月30日の1日目は、第3Q終了時のスコアは54-73で19点差がついており、試合を通して最大で21点のビハインドを背負っていた。
それでも残り1分を切った時点で、ほとんどの試合でベンチ出場ながら活躍する、阿部友和の3Pで同点に追いついた。
大みそかに行なわれた2日目の試合でも、最大20点差のビハインドを背負った。
しかし、第3Q終了を告げるブザーの前に富樫が3Pラインのはるか手前から放ったシュートが決まり、一時は63-62と逆転した。あれが1つのハイライトだった。
第4Qの前のブレイクタイムが始まるやいなや、チアリーダーたちが全速力でコートへ飛び込む。年内での解散が決まっていたSMAPの往年の名曲「SHAKE」にあわせ、満面の笑みで踊り出す。本来は会場のファンを盛り上げる役割を担う彼女たち自身が、興奮を抑えきれない。もちろん、その熱は伝わる。それにつられるかのように多くのファンが立ち上がって手拍子を、歓声を送っていた。
では、そこまでしても王者の背中に届かなかったのは何故だろうか――。
たとえば、2試合目に2点差で敗れた理由は、表面的にみれば、3Pシュートの成功率がわずか26.5%だったから。今季のここまでの平均成功率の35.8%から10%近くも下回っている。
しかし、勝負を分ける4Qでジェッツが3Pを立て続けに外していた時間帯で、王者・川崎はリーグ得点王のファジーカスを中心に、ゴールに近い距離からのシュートをコツコツと決めていた。
「これで点を取る」という意識統一の重要性。
現在のチームのなかで最年長となる、37歳の伊藤俊亮という選手がいる。ジェッツの大野篤史ヘッドコーチがインタビューなどで信頼を口にしているベテランの言葉には重みがある。
「どうしてもチームが点を欲しいときに、どうやって取るのか。そこがもうひとつ、足りなかったかなと思います。勢いを出して、戦えるところまで持って行くことは出来たかもしれませんが、『ここはどうしても取りたい』というときのワンプレーの精度が低かったのかなと思います。
うちにとってのそれが、3Pでもいいんですよ。でも、『うちはこれで点を取るんだ。このシュートで落ちればしょうがない』というところまで、意識統一がまだ、出来ていなかったのかもしれないです。そのシュートが本当にチームの全員の『気持ちの乗ったシュート』なのかどうかにかかってくるかなと思います」
「気持ちの乗った」というのは今季のジェッツを語る上でのキーワードの1つだ。