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日本一に輝いた千葉ジェッツの誘惑。
ライバル、初タイトル、理想の体験。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2017/01/13 07:00
千葉ジェッツにとって初めてのタイトルとなった、全日本総合選手権。2011年に創設された新しいチームにとって、記念すべき日だ。
船橋アリーナでは、いつだって選手が戦っている。
ジェッツの選手たちはどんな試合でも、常に全力で闘う。
ファンにとって、これほどわかりやすく魅力的なものはないだろう。
バスケットボールに詳しくない人でも、船橋アリーナへ足を運べば選手たちが戦っている姿が見られる。そこで興奮を覚えるかもしれない。勇気をもらえるかもしれない。そんな期待を抱けるから、ファンは定期的に観戦に訪れるようになる。
スポーツクラブの経営でやっかいなのは、クラブの収益がチームの成績に影響されがちなところにある。だからこそ、クラブを経営する者に課せられるのは、チームの成績に左右されない集客力だ。
集客力を得るために必要なのは、チームの成績が悪くても、結果が伴わなくても、『変わらずにアピール出来るモノ』があること。ジェッツにはそれがある。
「Be Professional」
それが、今シーズンのジェッツのスローガンである。
スタイルではなく、志を築く。だから、彼らは強くなる。
体験型エンターテインメントの理想になる。
1月9日に成し遂げた「オールジャパン2017(天皇杯・全日本総合バスケットボール選手権大会)」の初優勝という偉業も、ジェッツの成長神話の序章に過ぎないかもしれない。くしくも、決勝の相手は、王者・川崎だった。年末の2試合があったからこその勝利だろう。これで川崎との間には、特別なライバル関係も芽生える。王者とて、辛酸をなめて黙っているはずはない。ファンを夢中にするストーリーがまた1つ、生まれた。
「バスケット選手として、どれだけ点差がついていようが、コートにいる以上、100%でやるというのが僕のスタイル。それをやらないとプロ失格だと思うので」
年末にそう話していた阿部は、熱をこめて強調した。
「ファンの方があれだけ盛り上がって、追いつくための雰囲気を作ってくれたから、僕たちはあそこで同点まで追いつけました。ああいう雰囲気が作れるからこそ、僕たちも盛り上がる。僕たちがやれるからこそ、ファンの人たちも盛り上がれる。チームとファンの人の一体感があるからこそ、あきらめることなんて、出来ないですよね」
ベテランの伊藤が指摘したような「全員の気持ちの乗ったシュート」に、ファンの想いも乗り移る日も遠くはないのかもしれない。
「千葉ジェッツ」というチーム名の由来は、千葉県にある最も有名な施設である成田空港やジェット機にちなんでいる。
選手からファンにいたるまで、チームに関わる者すべての想いを乗せて飛んでいこうとするジェッツは、体験型エンターテインメントが求められる時代を生きるスポーツクラブとして理想的な存在なのである。