炎の一筆入魂BACK NUMBER
勝つことを知り、優勝の重みを得た。
V2狙う広島に黒田の蒔いた種、育つ。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byNaoya Sanuki
posted2016/12/31 07:00
16勝3敗の成績でセ・リーグの最多勝と勝率第1位のタイトルを獲得した野村。プロ入り5年目で年俸1億円超(推定)を達成し、来季は開幕投手も狙う!
強力な打撃陣は相手打線にも影響を与えていた。
強力な攻撃陣による影響は自チームだけでなく、対戦相手にも与えることがある。
石井琢朗打撃コーチは、6月3日ソフトバンク戦の試合後にこう振り返った。
「ソフトバンクとの試合で、うちの打線は先発投手だけでなく、ソフトバンクの打線を見ながら攻撃していたようだった。打者は投手との対戦なんだけど、攻撃陣は自然と相手打線も見ている」
黒田が3者連続本塁打を浴びたソフトバンク打線を前に、広島の選手たちは本来の打撃ができていなかったように感じた。
自チームで起きていたことが、シーズン途中からは相手球団に起きるようになった。
「今年の広島打線は破壊力があって、粘り強い。強力だ」
そんな印象を強く与えたことで、対戦相手は1点でも不安になる。リードしていても不安になる。当然タイスコアなら焦る。心理的なプレッシャーを多く与えていた。
目に見える快進撃は、目に見えないものに支えられていたのかもしれない。
打撃コーチ3人体制が、このチームの英断だった。
打撃コーチ3人体制が英断だった。3人の功績は計り知れない。
日本球界に名を残すバットマンの石井打撃コーチ、選手とともに長く一緒にプレーした経験から選手の性格を熟知したアドバイスを送る東出輝裕打撃コーチ、そして選手の兄貴分的な存在でときに叱責する厳しさを併せ持つ迎祐一郎打撃コーチ補佐の、絶妙なトライアングルが広島打線を変えた。
さまざまなアプローチで技術力を上げたところに自信という水が加わり、優勝という名の花を咲かせた。
大きな花も、散って終わりではない。花を咲かせるとともに、つぼみがいくつもできた。
広島はまだ発展途上。チームの主力となったキクマルコンビの菊池涼介、丸佳浩を始め、野村祐輔や田中広輔、安部友裕の同世代はまだ27歳。今村猛や中崎翔太、鈴木誠也らは彼らよりもまだ若い。