炎の一筆入魂BACK NUMBER
勝つことを知り、優勝の重みを得た。
V2狙う広島に黒田の蒔いた種、育つ。
posted2016/12/31 07:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Naoya Sanuki
日本一こそ逃したが、2016年は広島のシーズンだった。新井貴浩の2000安打と黒田博樹の200勝という大記録が同時に誕生し、25年ぶりの戴冠で2人が涙した。レジェンドの1人黒田が現役を引退し、背番号15は永久欠番となることも決まった。オフには野球ネタにとどまらず、流行語大賞まで受賞する、まさに「神ってる」1年だった。
シーズン中盤から見せた驚異的な強さは偶然生まれたものではない。
黒田と新井という投打の両輪に引っ張られるように、試合を重ねるごとに力をつけていった。89個積み重ねたものは、白星だけでなく、広島ナインの自信でもあった。勝つことで自信をつけ、勝つことで形ができていった。シーズン中盤は勢いだけではない、本物の強さがあった。
チームの成功体験が、若手選手を急激に成長させた。
意識の変化を生む要因は、チーム内にもあった。
'16年、「ビッグレッドマシンガン」とも呼ばれた強力な打撃陣。684得点という数字だけで表されるものだけでない。安定した得点力は、間接的に投手陣を助けることにも繋がった。
好調な打線と精神的な成長がうまくかみ合い、飛躍したのが野村祐輔と言える。
シーズン中は何度も「1点を取られても、次の1点を与えないように切り替えようとしてきた」。言うは易しも行うは難しだろうが、実際にシーズン序盤は打線の援護で得た勝ち星も多かった。
成功体験が野村の精神的成長を後押ししたと言える。