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内田篤人「本当に無駄な1年9カ月」
言葉と裏腹に表情は嬉しそうだった。 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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posted2016/12/09 14:30

内田篤人「本当に無駄な1年9カ月」言葉と裏腹に表情は嬉しそうだった。<Number Web> photograph by AFLO

試合後、報道陣の取材に答える内田。クールなやり取りの中にも、表情と瞳からは確実に充実感が漂った。

自分のユニフォームがロッカーにあって……。

 そして鹿島のトレーナーとの連携も続け、9月には「非常によくなっている」と内田本人も手ごたえを語っていた。翌10月には良好な検査結果も出て、チーム練習に合流し、この日の試合復帰へと時間を積み重ねた。

「難しい手術で、難しい怪我だということはわかっていたけれど、手術をしても治らないという状況のなかで、自分の決断が間違っていたのかと迷ったし、自分を信じられないときが一番きつかった。そんななかで鹿島の塙(敬裕/フィジオセラピスト)さんやデュッセルドルフでいっしょにいつも付き合ってくれた吉崎(正嗣)さんがいて、膝も良くなっていった。これからは自分を信じてやらなくちゃいけないと思う」

 復帰を信じ、ヨーロッパリーグの出場選手に内田を登録したシャルケのスポーツディレクターは、消化試合となるザルツブルク戦が内田の復帰に相応しいと発言した。そこからは12月8日での復帰がひとつの目標となる。

「スタジアムについて、自分のユニフォームがロッカーにつるされているのを見たときは、“あぁ~”って思った」

「リハビリ期間も僕のなかでは変な感動はない」

 自分のいるべき場所を再確認した瞬間だったのだろう。そのユニフォームは、この日対戦した南野と交換した。

「アスリートにとって、怪我なんて良いことはひとつもない。1年9カ月のリハビリ期間も僕のなかでは変な感動はないから。自分で怪我をして、自分で長引かせて。本当に無駄な1年9カ月だった。だからもうそこはさっさと忘れて、次へ行かなくちゃ。

 サッカー選手にとって、27、8歳って一番いいときでしょ。たくさんいい経験が出来るし、身体は動くし、一番脂がのっている。その時間を捨ててしまったんだから。そこを取り返すというか、ここからが本当に大変だと思っている。

 次の目標はフェルティンス・アレナのピッチに立つこと。1年9カ月やっていないサッカー選手、アスリートはひとつ間違えば、引退かって言われる。引退がかかっているから。シャルケのドクターにも『俺は(内田が)復帰できるとは思わなかった』と言われたからね。そういうところから、やっと復帰できたんだから、ベンチだ、スタメンだって贅沢は言わず、競技を長く続けていけられることをありがたく思わなくちゃいけない」

【次ページ】 「やっぱり勝ちたい、と頭に浮かんだのは良かった」

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