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内田篤人「本当に無駄な1年9カ月」
言葉と裏腹に表情は嬉しそうだった。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2016/12/09 14:30
試合後、報道陣の取材に答える内田。クールなやり取りの中にも、表情と瞳からは確実に充実感が漂った。
「復帰して、スタートラインには立てたけど……」
「味方を待とうか、削ってでも止めるべきか迷ったんだよね。まあ、難しい場面だった」と振り返る内田からは、悔しさよりも“物足りないなぁ”という感情が伝わってきた。
「10分じゃ、何もできないよ。やっと復帰して、スタートラインには立てたけど、今日は長い間リハビリを頑張ってきたご褒美みたいなものだから。なんかもっと、いろいろ感じるかなって思っていたけど、だんだん試合時間も無くなるなかで、冷めていった部分があったのかな」
これまでも大きな試合で勝利したあとの内田はあえて、ミックスゾーンではクールにふるまうタイプの選手だ。1年9カ月ぶりの実戦復帰の喜びも抑えているのかもしれない。
古巣・鹿島でのリハビリで転機が訪れた。
2015年3月10日のチャンピオンズリーグ対レアル・マドリー戦に出場後、「痛みがなくならない」とひざを曲げることもできず、足を引きずりながら、ミックスゾーンを歩く内田の後ろ姿はその右ひざの状態の悪さを物語っていた。
2015年6月には日本での手術に踏み切り、2016年春には日本でリハビリを開始した。古巣鹿島で、転機が訪れる。一般的な骨の位置ではなく、内田本来の位置へ戻すという新たな方法を取り入れることで、ミニゲームに参加できるほどに回復した。シャルケに戻りドイツ流でリハビリを始めたら症状が悪化したことを契機に、ドイツ在住の日本人トレーナーとのトレーニング許可をシャルケから得た。