“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
高円宮杯プレミアリーグで目撃せよ!!
十代のゴールキーパー達の青春。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/04/13 10:40
年代別代表にも選出されている青森山田・廣末陸。全国選手権はベスト4だったが、どんな活躍を見せてくれるだろうか。
GKとして這い上がってゆくための術。
この強烈な武器は、彼が「GKとして這い上がってゆくための術」でもあった。小学校時代は技巧派FWだった廣末だったが、当時は小学生の中では背が高い方で、反応も良かったことから、GKにコンバートされ、GKとしてFC東京U-15深川に入団した。しかし、レギュラーこそ獲得したが、同い年の山口瑠伊(現・ロリアン、フランス)が180cmを越えており、廣末の身長は中学3年の段階で176cmしかなかった。
「このままでは自分の評価は上がらなくなる。身長をカバーするために、GKとしての基礎はもちろん、絶対的な武器が必要だった。足下の技術とキックは自信があったので、そこを徹底して磨こうと思った」
生き残っていくために、廣末は必死で武器を磨いた。だが、彼はFC東京U-18に昇格できなかった。昇格をしたのは、チームメイトの183cmの山口とFC東京U-15むさしの190cmオーバーの長身GK波多野豪だった。
「別の武器も磨いていかないと、僕の取り柄が無くなる」
「中学の時、人一倍ご飯も食べたし、食後に毎日牛乳を1リットル飲んだ。身長では判断されたくはないと思っていたけど、絶対に必要なことだとは分かっていた。でも、中学卒業の段階ではそれが足りなかった。波多野と合同練習で一緒にトレーニングをしたり、対抗戦で戦ってみると、彼の手が届く範囲を僕が届くようになるには、相当な努力がいる。もちろん届くための努力は惜しまない。でも、別の武器ももっと磨いていかないと、僕の取り柄が無くなると思った」
危機感を増した廣末は、青森山田高に進学を決めると、1年時から守護神の座を掴んだ。キックという武器だけでなく、キャッチング、セービング、ポゼッションの参加やビルドアップ、広大な裏のスペースのカバーリングなど、近代GKに必要な技術に磨きをかけた。
身長も181cmまで伸びた。昨年はU-18日本代表としてラオスで開催されたAFC U-19選手権予選に、フランスのロリアンで活躍する山口と共に出場。今年もU-19日本代表の常連となっており、プロ注目の存在になっている。
開幕戦では流通経済大柏を相手に、得意のキックで攻撃にリズムをもたらし、そのキックの精度と飛距離で会場を何度も沸かせた。安定したセービングも披露し、3-0の完封勝利に貢献した。