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今年の新人王はセもパも東都2部!
原樹理と吉田正尚、2人の「特殊能力」。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/03/22 10:30
吉田正尚のあまりにも豪快なスイング。173cmと小柄ながら大学日本代表の4番に座った実力は本物だ。
原から唯一の1点をホームランで奪った男・吉田正尚。
その東洋・青学3連戦で、原樹理から唯一の1点を奪ったのが、青山学院大の外野手・吉田正尚だった。
一回戦、原樹理のおそらくカットボールだと思う。珍しくフッと甘く入ってきたところを東洋大グラウンドの深い右中間へ。140mも飛んだのではないか、馬鹿でかいホームランで一矢を報いた。
そういうバッターだ。
人の記憶に残るような場面で、かっこよく“MAX”の仕事をやってのける勝負強さ。いや、そんなものじゃない。彼一流の世渡りのうまさであり、役者根性でもあろう。
バッティング技術のレベルの高さについては、誰もが認める選手だ。だから、いつも「学生ジャパン」の候補になって、オーディションである「候補合宿」では、いつも見事なバットコントロールで左右に長打を打ちまくり、「ジャパン」の主軸として奮戦した。
高橋光成、高橋樹也、上野翔太郎を子ども扱い。
忘れられない場面はいくつもある。
昨年6月、ユニバーシアード大会の壮行試合のこと。NPB若手選抜の高橋光成(西武)のファーストストライクを、ひと振りで神宮の右中間中段に持っていったスイング。
さらに、8月。
U18世界大会の壮行試合で、高校ジャパンの花巻東高・高橋樹也(広島3位)から甲子園のバックスクリーンへ叩き込んだバッティング。同じく、中京大中京・上野翔太郎から右中間へライナーで持っていった打球。
いずれも相手は、やがてプロの第一線で投げるであろう逸材ぞろい。その快腕たちを、吉田正尚はたったひと振りで子ども扱いしてみせた。
ふところを広くとって構え、明確なトップを作りながら自分の空間まで投球を十分呼び込んでハッシと叩く。
プロの打者たちが東洋大・原樹理に対してなし得なかったことを、青山学院大・吉田正尚はいとも簡単にやってのけた。
注目を浴びる大舞台で、当然のように持っている全能力を発揮してしまう“能力”。それが吉田正尚だ。