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オリックス・東明大貴のルーツとは?
「超隠し玉」だった大学1年生の頃。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/09/25 10:30
プロ2年目にして二桁勝利を挙げた東明大貴。四球の少なさにも特徴がある。
新人王筆頭かと思ったら、1年目は苦労した。
絶対的エースというのは、こういう投手のことを指すのだろう。いつも投げている“鉄腕”ではないが、投げれば勝ちを持ってくる“快腕”として、4年間たいした故障もせずに30勝11敗。もっと立派だったのが通算防御率1.86。9回投げれば2点までに抑える、ありがたい存在だった。
社会人野球の強豪・富士重工の2年間も主戦格の1人として、コンスタントなピッチングを続け、ドラフト2位でオリックスに進んだのが昨年だ。
富士重工の2年目、ドラフトを1カ月後に控えて、ピークに近い状態の時に東明大貴のピッチングを受けている。
思ったとおりの空気を切り裂くような快速球に、ベースの上で小さくキュッと曲がるスライダー。打者の気合をはぐらかすようなフワッとしたカーブに、勝負球はフォーク。このフォークの沈みとコントロールに驚いた。
新人王の筆頭だと思ったら、1年目は苦労した。先発時の立ち上がりを見て驚いた。
腕の振りが違っていた。見間違いでなければ、こわごわ投げていた。ストレートはまだいい、持ち味の変化球が「変化球いきます!」。そう言わんばかりに加減して投げていた。
考えてみれば、「怖いもの知らず」。
大学、社会人が順調過ぎた。どこかで痛い目に遭っていてよいはずが、かわいがられてそのままプロにやって来た。
そのツケが、もろにプロの1年目におおいかぶさってきている。あんなにハツラツとしたマウンドさばきが消えている。聞かなくてもわかった。
5勝7敗、防御率3.79。
もっとやられてるかと思った。ファームでも結構打ち込まれていたからだ。
腕の振りは投手の覚悟であり、矜持。
そんな“ひるみ”は今年も見えていた。6月まで2勝4敗……。
しかしそこから一気に勝ち星を重ねて、9月9日には10勝目をプロ初完封で飾った。
何が変わった?
間違いなく、腕の振りが変わった。
腕の振りとは、投手の覚悟であり、叫びであり、矜持である。夏からこっちの東明大貴は、投手の“生命力”を取り戻した。