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優勝目前のヤクルトの贅沢な悩み。
バレンティンをどう起用すべきか?
posted2015/09/24 15:30
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
NIKKAN SPORTS
サングラスの男は二度、グラウンドに出てきた。
一度目は6回裏、9番・館山が立つべきはずのネクストバッターズサークルに。二度目は7回裏、7番・三輪が立つべきはずのサークルに入り、バットを軽く振り回した。
9月23日、神宮球場で行われたヤクルトvs.広島23回戦。ウラディミール・バレンティンはダミーの色が濃いサークルでの代打待機で姿を現し、二度とも打席に向かうことなくベンチへ下がった。8回裏に代打としてようやく打席に入りサードライナーを放ったが、二度のダミー待機こそ今のバレンティンの立場を象徴しているようにも思えた。
3年契約の2年目、年俸250万ドル(約3億円)のバレンティンは今季、ほとんど働いていない。昨秋に左アキレス腱の手術を受けた影響で開幕に間に合わず、4月24日に復帰するも1戦目で左太ももを負傷。アメリカで再び手術を受け、9月18日の巨人戦でようやく今季2試合目の出場を果たした。
3年連続ホームラン王の復帰が難しい理由。
7連戦の初戦となったこの試合でいきなり1号2ランを放つと、翌日には4打数3安打2打点とブランクを感じさせない活躍を見せ、「モノが違う」(宮出隆自打撃コーチ)と首脳陣を安心させた。
だが、それもつかの間、復帰3戦目となる20日の阪神戦以降はノーヒットが続く(9月23日現在、以下同)。そして冒頭の広島戦では、両足の張りを理由にスタメンから外れたのだった。
2011~2013年に3年連続ホームラン王を獲得したバレンティンの戦列復帰が、ヤクルトの戦力にとってプラスなのは間違いない。ただ、その起用法は難しさを伴うのも事実だ。怪我の再発への懸念に加えて、既存の打線との融合も課題となる。
今季のヤクルトは、故障が続いたバレンティンとラスティングス・ミレッジの不在をものともせず、トリプルスリー達成が確実な山田哲人を中心に、首位打者争いを引っ張る川端慎吾、目下打点王の畠山和洋ら、和製強力打線が快進撃を支えてきた。出遅れていた雄平も9月は月間打率.345、直近10試合連続安打中と好調で、「今度こそ調子が良くなってきた」と手ごたえを口にしているという。